ESG投資とは
——「ESG投資」って、何ですか? 普通の投資とは何が違うのでしょうか?
「投資」とは、企業の株式や債券を買うことです。投資の中で「ESG投資」とは、E(Environment=環境)、S(Social=社会)、G(Governance=ガバナンス)を基準に企業の株式や債券を買うことをいいます。
これまでは、企業の収益性や自己資本比率といった収益性のデータを基準に投資判断がなされてきました。これに対し、財務情報だけではなく非財務情報である、環境問題や社会問題に対する取り組み、あるいはガバナンスのあり方も判断基準に加え、投資を行うことを「ESG投資」と呼んでいます。
「環境」「社会」「ガバナンス」への観点
——E・S・Gのそれぞれについて、もう少し詳しく教えてください。
1つ目の「環境」は、気候変動対策といった環境問題に取り組めているかです。日本では昨年、集中豪雨が相次ぎました。長野県白馬村では雪がなくなりつつあるという話もありますし、海面上昇により沿岸の工場が操業停止に陥るリスクも高まっています。こうした環境問題の進行、気候危機に対して、企業がCO2削減や自然エネルギー推進などの対策を実行しているかが問われます。
2つ目の「社会」については、たとえば地方には耕作放棄地がたくさんあります。地方都市は人口が減少し、少子高齢化が深刻です。医療費の増大により、高齢者の健康維持が立ち行かなくなる懸念もあります。このような社会問題に対して、企業がいかに取り組んでいるかが2つ目の観点です。
3つ目の「ガバナンス」は、社長が不正に多額の役員報酬をもらっていたり、過労死が相次いだりしていないか、長期的なビジョンを持っているか、ジェンダー平等を推進しているかなどです。つまり、企業統治が適切に行われているかを判断します。
ESG投資の有効性
——なぜ「ESG投資」が注目を集めているのでしょうか?
ESGの3つの観点を踏まえた投資の方が、収益性だけを考慮した投資よりも、投資リスクを減らし、企業価値が上がるため、リターンにもつながることが実証されています。「倫理性」と「収益性」を兼ね備えた投資方法として、ESG投資は世界で注目されているのです。
SDGsとの関連
——SDGsとESG投資にはどのような関連性があるのですか?
このESG投資を行う前提となるのが、2016年にスタートしたSDGsです。SDGsは、ご存知の通り国連の提唱する17個の持続可能な開発目標で、2030年までに達成することを目指す世界的な動きです。
中でも環境問題はSDGsの根底にあり、世界は地球環境を守るために温室効果ガスを0にする課題に直面しています。このような現状の中でESG投資は、SDGsの達成に向けて資金を動員する仕組みだとも言えるのです。
伊藤宏一(いとう・こういち)
人間社会学部教授。日本FP学会理事。NPO法人日本FP協会専務理事。「金融経済教育推進会議」(金融庁・金融広報中央委員会等で構成)委員。(一社)全国ご当地エネルギー協会監事。専攻はパーソナルファイナンス、ソーシャルファイナンス、金融教育、ライフデザイン論。著書等に「シェアリング・エコノミーと家計管理」(『生活経営学研究』2018)、「人生100年とライフプラン3.0」(『月刊 企業年金』2017)、『実学としてのパーソナルファイナンス』(編著中央経済社)、H・アーレント『カント政治哲学の講義』(共訳 法政大学出版局)、アルトフェスト『パーソナルファイナンス』(共訳 日本経済新聞社)など。
この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)
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