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コラム

こんにちは。
千葉商科大学商経学部准教授の奥寺葵です。

今回は、アフターコロナ時代を見据えて「経営」を考えるときに、読んでおきたい本を3冊ご紹介しましょう。

世界を脅かしている新型コロナウイルスは、人々の働き方、企業経営のあり方をガラリと変えてしまいました。こうした変化に対応し、厳しい状況を打開するために企業は何に取り組むべきでしょうか。

例えば、感染拡大前から重要視されているSDGs(持続可能な開発目標)。社会や環境の問題に対して取り組むことは企業の責任とも言え、混乱した世の中だからこそ浮き彫りになる課題もあります。

しかし、まずは企業がしっかりと収益を上げ、働く人々の生活を安定させないことには、社会問題にも取り組めませんよね。

そこで、キーワードとなるのが「生産性」です。はじめにおすすめするのは、ビジネスマン一人ひとりが仕事の質・生産性を上げるためにぜひ参考にしてほしい一冊です。

1.『イシューからはじめよ——知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人著(英治出版2010年刊)

イシューからはじめよ

こちらは28万部を突破したベストセラー。生産性が高い人の思考術や問題解決法を詰め込んだ「ロジカルシンキングの決定版」として有名ですね。

問題解決のための重要な流れとして、(1)課題(イシュー)を見極める (2)仮説を立てる (3)ストーリーを描く (4)分析する (5)伝える の5つがあげられ、プロセスごとの考えや手法が具体的にまとめられています。より意味のあるアウトプットをしたい、新規プロジェクトを立ち上げたいといった人ならすぐにでも役に立つ、とても実践的な本です。

刊行は10年前なので最新の本というわけではありませんが、テレワークの導入が進み、対面コミュニケーションが敬遠される今だからこそ、読んでみてハッとさせられる言葉もありました。

例えば、著者は「はじめに」の部分で「10分以上悩むな」と言っています。

「悩む」と「考える」は違います。「悩む」というのは、答えが出ないことが前提であり、考えているフリをしているだけ。一方で「考える」とは、答えが出ることを前提に建設的に考えを組み立てること。仕事ですべきは考えることであり、10分以上真剣に考えて前に進まないのであれば、いったんその場を離れるべき。

皆さんも、ひとりで在宅ワークをしていると、知らないうちに何時間ももんもんと悩んでいることがありませんか? とても生産性のある時間とは言えず、それ以上続けても答えは出ないというのが著者の考えです。

悩んでいることに気づいたら思い切ってその時間を断ち切ることが、ビジネスの大きな一歩になるのかもしれません。

2.『SDGs(持続可能な開発目標)』蟹江憲史著(中央公論新社2020年刊)

SDGs(持続可能な開発目標)

さきほど、企業にとってまずは収益を上げることが大切とお伝えしました。しかし、やはり企業の価値はそれだけでは計れず、社会への貢献もますます重要となってくるでしょう。

これからの時代で理想となるのは、売り上げを伸ばすほど社会問題の解決にもつながる仕組みをつくること。仕組みを考える上でとても参考になるのが、SDGsが示す17のゴールと169のターゲット(より具体的な目標)なのです。

図書館や本屋などでSDGs関連のビジネス本を探すと、ほとんどは基本的な内容を説明した入門書ですが、本書は、企業がなぜSDGsに取り組むべきなのか、具体的に何をしていけばよいのかということに踏み混んで理論的に解説されています。

私は仕事がら企業に勤める方々とよくお会いするのですが、SDGsについては、講習を受けたり本を読んだりして学び始めたという人が多い印象です。そんな方たちの次のステップとして、この本がSDGsと現実の仕事を結びつけてくれるでしょう。

3. 『SDGs経営——“社会課題解決”が企業を成長させる』松木喬著(日刊工業新聞社2019年刊)

SDGs経営

SDGsを経営に取り入れるにあたって、統一されたルールや指標は存在しません。照らし合わせるものがないということは、判断に迷うことが多いものです。

そんなときに一番知りたいのが、他社のケーススタディ。本書では、新聞記者である著者がSDGs経営を実践する17の会社を取材し、成功までの詳しい道のりをまとめています。

目指しているSDGsのゴールも、企業の規模も、業種も、手法もさまざま。SDGsを経営に取り入れるメリット、すでにある事業を生かす方法、SDGsのゴールの組み合わせ方、社員の意識を高める秘策など、企業のウェブサイトなどからは読み取ることのできないリアルなストーリーが紹介されていて、私自身とても参考になりました。

世界は今、危機に直面しています。だからこそ、仕事をしているときは、「今やっていることがお客さまを喜ばせられるのか?」「社会をよくするのか?」と問いかけてみてください。

一人ひとりが仕事の質を上げ、その先によりよい社会を考えることができれば、きっと以前よりも明るい未来が待っていると思います。

奥寺葵(おくでら・あおい)
商経学部准教授。専門は人的資源戦略。仕事とプライベートを切り分けずに共に充実させる「ワークライフ・インテグレーション(統合)」の観点から、生活全体の質を高めた生き方や人材活用戦略を研究。千葉商科大学学長プロジェクト2「CSR研究と普及啓発」チームメンバー。好きな作家は三浦綾子。リモートワークで時間を有効活用できるようになり、趣味のヨガを再開して体力維持に努めている。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標8働きがいも 経済成長もSDGs目標9産業と技術革新の基盤をつくろう
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