シンポジウム・研修会等

日時:2025年4月16日(水)17:30~18:30
場所:オンラインにて開催
講演者:Dan Ralescu博士(シンシナティ大学)
タイトル:混合モデルの統計的意思決定

本学では、2025年4月1日から4月20日までシンシナティ大学数理科学部のDan Ralescu博士を海外研究員として受け入れ、4月16日に教職員向け特別セミナーを実施しました。当日ファシリテーターを務めた会計教育研究所兼担研究員の寺野隆雄教授のコメントをご紹介します。

総合研究センター会計教育研究所の2025年度定常的プロジェクト「企業経営課題解決に資する人工知能技術の適用に関する研究」の課題への協力を得るため、米国シンシナティ大学より、Dan Ralescu教授が来学し、2025年4月1日より4月20まで滞在されました。  Ralescu教授はルーマニア出身で、現在シンシナティ大学数理科学部教授職です。同氏の専門はファジイ論理に関する数学的取り扱いで、ファジイ論理とは、通常の数理論理学とは異なります。ある要素が通常の集合(ファジイ論理の枠組みでは、これをクリスプ集合と呼ぶ)に所属するかどうかを明確に表すのに対して、ファジイ論理では、集合概念の境界をあいまいなものとし、「背が高い」「年齢が若い」などの概念を言語で表現します。例えば、商大太郎君が、170㎝、20歳だとすると、彼は「背が高い」人の集合には「半分くらい」所属し、「年齢が若い」人の集合には「ほぼ」所属しているというような表現ができます。このようなあいまいさを、ファジイ集合のメンバーシップ(帰属度)の度合いで表します。確率も帰属度も、0から1までの値をとるが、確率とはファジイ集合での扱いは異なります。
Ralescu教授の講演は、こんなファジイ論理に関する研究を紹介するもので、「数を使わない統計学」と題して行われました。このような考え方は、近年の人工知能研究との関連も深く、研究センターのプロジェクトと絡めて紹介いただきました。

講演の概要は以下のとおりです。

:多くの統計データは、測定誤差、計算誤差、情報不足といった要因により不正確であり、このような場合、データは単一の数値ではなく、区間やファジィ集合として表現する方が適切である。区間値データを分析する既存の手法としては、区間の距離空間における回帰分析や、より一般的な設定で提案されたシンボリックデータ分析が挙げられる。本講演では、ランダム集合、特にランダム区間のための正規階層モデルを提案する。さらに、モデルパラメータに対して最小コントラスト推定量(MCE)を開発し、これが一貫性を有し、漸近的に正規分布に従うことを示している。そして、シミュレーション研究により理論的成果を裏付けた。

会計教育研究所兼担研究員 寺野隆雄