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今日のランチに明日の夕食。その日の気分と相談しながら、食べたいものを考えるのは楽しいことです。しかし「何を食べるか」という選択は、私たちの食欲だけでなく、食糧危機から地球環境、人類の健康から動物福祉に至るまで、さまざまな課題ともリンクしています。

千葉商科大学では、昨年11月に開催した「ダイバーシティウィーク2022」のなかで、グローバルな視点から「食の選択」を考える、オンラインセミナーを実施しました。講師は、「NPO法人ベジプロジェクトジャパン」の川野陽子さん。大学で農学を学んでいたころ、日々の「食」が環境問題と深く繋がっていることを知り、ベジタリアンになったという経歴の持ち主です。

「一昔前の『菜食主義』に対して、"健康オタク"や"意識高い系"といったイメージもあったかもしれません。しかし現代の『プラントベース』は、誰にとっても自然で、身近で、しかも豊かな食生活の一部となりつつあります」 そう語る川野さんと共に、未来に繋がる「食の選択」について考えていきましょう。

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川野陽子(かわの・はるこ)
京都大学農学部・京都大学大学院農学部研究科卒。2015年まで食品会社の輸出・海外事業部勤務。大学在学中の2013年に「ベジプロジェクト京大」を設立し、2016年には「ベジプロジェクトジャパン」としてNPO法人化。代表理事に就任した。同法人は、国内で最も利用されているヴィーガン認証を運営している。ベジタリアン・ヴィーガン専門家として、大学や飲食店へのヴィーガンメニュー導入、企業のヴィーガン関連のコンサルティング、セミナー講師などを務める。東京都、富山県、国土交通省などの事業においてベジタリアン・ヴィーガン関連の専門家として従事。

身近になったプラントベースフード

「プラントベース」という言葉を、聞いたことがありますか? 比較的新しい言葉で、植物由来の食品を「プラントベースフード」と総称したり、それを積極的に取り入れる食生活そのものを、「プラントベース」と呼んだりします。

スーパーの食品コーナーには、いつの間にこんなに増えたのだろうと驚くほど、バラエティーに富んだプラントベースフードが並んでいます。さまざまなタイプの大豆ミートにベジミート、牛乳に代わる豆乳やアーモンドミルク、穀物やナッツを巧みに使ったレトルト食品、純粋に植物由来のチーズ、ピザ、パスタ、餃子、カレー、スープ……。

「健康によさそうというだけでなく、栄養面でも、味についても、既存の食品に負けないプラントベースの食材や食品が、いまはたくさん出ているんですよ」と、川野さんは言います。
「これまでは、食のデフォルトが動物性食品で、それが嫌だったり食べられなかったりする人が、ベジタリアン食やヴィーガン食を選択してきました。それが逆転し、デフォルトがプラントベースメニュー、それが嫌な人は動物性食品が自由に選択できる。そんな未来も、案外、近いかもしれませんね」

プラントベースと似た言葉に、ヴィーガンやベジタリアンがあります。ヴィーガンは厳格な菜食主義。ベジタリアンには、ヴィーガンのように厳格な人もいれば、卵や乳製品はOKという人たちも含まれるとか。さらに最近は、「無理のない範囲でベジタリアン志向」という、フレキシタリアン(フレキシブルなベジタリアン)も増えていて、アメリカではこのフレキシタリアン人口が、3割ほどいるといわれているそうです。

厳格な菜食主義であるヴィーガンも、ベジタリアンも、フレキシタリアンも、大きな括りでは、みんなプラントベースな食生活を選ぶ人たち。プラントベースは守備範囲が広く、けっして一部の人の専売特許ではないことがよくわかります。

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地球規模の多様な課題と「食の選択」

ではなぜ世界中で今、プラントベースフードや、プラントベースという新しい食のスタイルに、熱い視線が注がれているのでしょうか。個々の健康志向だけがその理由を川野さんが挙げてくれました。

  • 食べ物としての価値の高まり
  • ファッション性が魅力に
  • 宗教上の食の制限にも対応できること
  • 健康的で栄養があること
  • 地球環境に優しいこと
  • 家畜産業による環境汚染の軽減につながること
  • 漁業による環境破壊の軽減につながること
  • 食糧問題の解決に資すること
  • 動物たちへの共感

プラントベースは環境問題以外に、「飢餓をゼロに」、「すべての人に健康と福祉を」、「人や国の不平等をなくそう」、「つくる責任 つかう責任」、「平和と公正をすべての人に」など、さまざまなSDGs目標と密接にリンクしています。それだけに、「とても奥が深くて、おもしろいテーマだと思います」と、川野さんは話してくれました。

できることから、プラントベースを始めてみよう!

ビジネスや経済の観点から見ると、プラントベースはいま最も急成長している市場のひとつで、2024年には世界で80ビリオンドル(8~9兆円)規模になると、予想されているそうです。

「たとえばアメリカのプラントベース市場は、2018年から19年にかけての成長率が11.1%。さらに2020年には、対前年比で27.1%も成長しました。同じ二桁成長にしても、わずか1年でこれほど伸びているのですから、かなり期待できる市場だと思います」と川野さん。

プラントベースへの理解が進む欧州や北米では、プラントベース食品の種類が豊富で、それを提供するレストランやスーパーも、たくさんできています。日本でもすでに、同じ兆しが見え始めました。今回の講演がきっかけで、プラントベースフードに興味を持った人に対して、川野さんは「一日3食のうち、1食だけ変えるだけでも、意味がありますよ」とアドバイスをくれました。

たとえば、週に数日だけ、動物性食品を食べない日をつくる。外食をするときは、メニューにあればプラントベースフードを選ぶ。動物性の出汁やブイヨンを、野菜だし(手作り・市販)に切り替える。自炊をするなら、肉や魚の替わりにベジミートを利用してみる。いきなり無理はせずに、できることからやってみるのがお勧めとのことです。

千葉商科大学の学生食堂The University DININGにも、講演の翌週、ダイバーシティ体験の一環として、プラントベースフードの特別メニューが期間限定で登場。珍しさでも美味しさでも好評でした。

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川野さんたち「ベジプロジェクトジャパン」では、プラントベースという選択肢が、当たり前にある社会を目指して、企業や教育機関、政府や国際組織とも協力しながら、食品開発の支援、ヴィーガンメニュー導入のサポート、イベント開催や講師派遣など、さまざまな活動を行っています。

「食の選択を通じて、優しい変化を社会に起こせると信じて、毎日ワクワクしながら活動を続けています」と、笑顔で語る川野さん。プラントベースフードとの出会いを通じて、あなたも日々の食卓を、楽しく、美味しく、見直してみませんか?

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

SDGs目標2飢餓をゼロにSDGs目標3すべての人に健康と福祉をSDGs目標6安全な水とトイレを世界中にSDGs目標10人や国の不平等をなくそうSDGs目標12つくる責任 つかう責任SDGs目標13気候変動に具体的な対策をSDGs目標14海の豊かさを守ろうSDGs目標15陸の豊かさも守ろうSDGs目標16平和と公正をすべての人に
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