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本学が2022年11月に開催した「ダイバーシティウィーク2022」の中で、注目を集めた講演会「多様な生き方が選択できる"今時の働き方"」。前半に引き続き、後半のレポートをお届けします。

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松本国一(まつもと・くにかず)
1991年富士通株式会社へ入社。合計16部門40部署でソフト/ハードの設計から製品・事業企画/販売推進/営業支援までさまざまな業務に貢献。現在、多彩な業務経験を生かしシニアエバンジェリストとして活躍中。多数のメディアで働き方改革の紹介や著名人との対談をこなすほか、学会誌の執筆や複数の高校・大学での講義など幅広く活躍を行う。

活発なデジタル活用の根底にある、社員と役員の近さ

前半でご紹介したように、全社DXプロジェクト「FUJITRA」を推進している富士通社。
同社でデジタル推進を担う松本国一さんは、講演の中で社内のデジタル活用例として「やわらかデザイン脳」という活動を紹介しました。これは社内横断型のコミュニティづくりを推進するプロジェクトで、そのなかで「スナックまり」というユニークな活動があるといいます。

「まりさんという社員が"もっと自分らしさを解放して働こう"と声をあげ、社内でオンラインスナックを定期的に開催しています。さらに彼女はこうした活動を通じて自分のやりたいことに気付き、"社内ポスティング"という制度を使って部署異動も叶えました」

こうした多様な働き方が叶うのも、経営陣と社員の距離の近さが根底にあると話す松本さん。富士通社では、役員とも気軽にチャットでやりとりができ、「いいね」を送りあうシーンも日常的だといいます。

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さらに、富士通社では、若手でも責任あるポジションや仕事にチャレンジできる制度があり、新卒2年目の若手社員が課長級に抜擢されたこともあるのだとか。

「昨今は、多くの企業で、やる気があれば何でも挑戦できる機会が増えています。良い意味で組織構造の破壊が進んでいるということ。経営層や会社全体に一人ひとりの声が届けば、会社全体を動かすことも可能なのです」

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働く場所・時間・スタイルも根本から変わりつつある

場所に依存しない働き方がじょじょに浸透してきている中、富士通社では通勤定期代支給の廃止、在宅勤務補助金支給、単身赴任の解消などを実施。さらに働く「拠点」の概念にも変革を起こしているそうです。例えば、社内は完全フリーアドレス化され、自分の固定席がないカフェ空間のようになり、社外の方とも仕事ができるコワーキングスペースが設けられているのだとか。

「役員フロアには壁がありません。例えば役員フロアの入り口を入れば社長の姿が見える状態になっています。までにはCEO室の方も在籍しており常にコミュニケーション可能で、業務の効率化にもつながっています」

そのほか、働くスタイルも変化。コアタイムのないフレックス勤務制度を導入するのはもちろん、これまでのようにみんなが得意も不得意も分担しながらやっていく「メンバーシップ型」ではなく、自分の能力を発揮しながらマイペースに仕事ができる「ジョブ型」へと変わってきているといいます。また、地方に移住し、そこで仕事ができる制度もあるそうです。

「場所・時間・環境・手段に縛られず、まず最初に、一人ひとりの"生き方"を考えて仕事ができる環境へと変わってきています。この動きは今後、大手のみならず中堅企業でも広まっていくでしょう」

「職種」の概念を超え、仕事は能力を活かして選ぶ時代

続けて松本さんは、社内で求められる仕事や能力が多様化していると話しました。

「例えばデザイナーといっても、プロダクトをデザインする人だけではありません。空間をデザインする人、業務を組み上げる人、ワークショップを企画する人、イラストを使って情報をわかりやすく整理・記録するグラフィックレコーディングをする人、さまざまなデザイナーが当社では活躍しています」

さらに、富士通に欠かせないコンサルタントの存在も紹介。かつては、モノを作り販売する企業でしたのでコンサルタントのような職種を担う人は必要なかったといいます。

「今はモノを売る時代からコトを売る時代。これからの時代の鍵となるDXにも、皆のやりたいコトは何かという観点が重要です。当社では、そこを追求するコンサルタントの存在が必要不可欠となっています」

生き方を軸に会社という舞台を使い、どう変革を起こすか

松本さんは社員が自分の存在意義を認識する「Purpose Carving」という活動も紹介。富士通社の社長は「私の存在意義は富士通の存在理由と同じ」と語り、副社長は「愛によって社会を幸せにすることを目指す、それが自分の存在意義だ」と語ったといいます。

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「存在意義を明らかにすることは、自分のすべきことや能力に気付き、発揮していく原点になります。個人の能力が集まれば、社会を変革する力にだってなります。この力はDXを推進する力にもつながりますね。DXのポイントはデジタル化ではなく、"X"であるトランスフォーメーション(変革)を起こすことなんです」

最後に松本さんは、学生に向けてこんなメッセージを残し、講演を終えました。

「今後、個人の能力を生かして働くことで、社会に変革を起こせる時代が到来するでしょう。会社は働く人のためのプラットフォームに変わってきています。だからこそ、これから社会に出る皆さんは、会社というステージをどう活用し、どう社会を変えていくのか、ということを『生き方』の延長線上で考えながら活動することが重要です。これがこの先求められる社会人像だと私は考えています」

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存在意義を定義することで叶えたい未来を見据えることが可能に!

最後に質疑応答がありました。

Q:リモートワークではオンオフの切り替えが難しいと思いますが、富士通社では切り替えるためのルールなどはありますか?

A:当社ではタイムレコーダーのオンライン版のようなシステムを導入していて、始業時間、就業時間、休憩もボタンひとつで管理できるようになっています。ただこれは時間労働制の働き方です。能力制の方々の働き方に時間の制限は設けられていません。例えば、私の場合、休日に質問が飛んでこればその瞬間はオンになります。オンとオフが完全に融合した働き方をしているんです。なぜそれが叶うかというと、自分に求められているのは、労働に費やす時間ではなく、アウトプットの結果だからです。そのため、自分がオフだと思えばオフ、オンだと思えばオンの時間にできるのです。
今後、時間労働制においては、時間管理のために「時間の細分化」が図られていくでしょうし、能力性のように時間が関係ない働き方も広がっていくでしょう。

Q:Purpose Carvingは就職活動にも役立ちそうですが、自分の存在意義を掘り下げるにはどうしたらいいでしょうか?

A:Purpose Carvingは複数人で行います。例えば生まれてから10歳まで、20歳まで、その後などに区切り、自分がしてきたことや得意分野を書き出して発表し合います。
アウトプットすることで自己分析が進みますよね。その後、自分にあった価値観のキーワードを選び、そこから未来に向け挑戦することなどを導き出し、過去の経験をもとにそれを実現する具体的な自分の存在意義(Purpose)は何かを言葉にする。
学生さんなら、例えば、入社する会社を想定した上で、過去の経験から得意分野を使って取り組みたいことや、どんな風に社会を変えていきたいということを掘り起こし、それを実現するキーワードを明確にします。
つまり自分を振り返って存在意義を定義することで、叶えたい未来を見据えることができる、というのがパーパスカービングの特徴であり、方法です。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

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