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2021年3月に「ダイバーシティ推進宣言」を発表した千葉商科大学では、2022年11月に第2回目となる「ダイバーシティウィーク2022」を開催。多様性を意識するきっかけの場として、グローバル、ジェンダー、障がい支援、職場環境の分野において、「知る+体験する」をテーマに、講演会や学生による発表などの多彩な企画を実施しました。

「職場環境」に焦点を当てたオンライン講演会「多様な生き方が選択できる"今時の働き方"」には、講師に富士通株式会社でシニアエバンジェリストを務める松本国一氏が登壇しました。新型コロナウイルスの影響で世界が大きく変わり、働き方にも変化が見られる今、多くの学生や教職員が注目した講演会の様子をレポートします。

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松本国一(まつもと・くにかず)
1991年富士通株式会社へ入社。合計16部門40部署でソフト/ハードの設計から製品・事業企画/販売推進/営業支援までさまざまな業務に貢献。現在、多彩な業務経験を生かしシニアエバンジェリストとして活躍中。多数のメディアで働き方改革の紹介や著名人との対談をこなすほか、学会誌の執筆や複数の高校・大学での講義など幅広く活躍を行う。

働き方をはじめ、数々の課題が浮き彫りになった3年間

講演会の冒頭、新型コロナウイルスの影響で社会が一変したことに触れ、それにより社会全体や働く現場でも不都合が"見える化"されてきたと話を切り出した松本さん。

「日々、報道されるコロナ感染者数は手集計によるもので、"人力による処理の限界"が浮き彫りになりましたし、給付金申請の際は、オンライン申請がパンク状態になり、"オンライン化の遅れ"も明白になりましたよね。さらに働く現場では、会社にハンコを押すためだけに出社するハンコ出社が話題となり、"古い社会構造"も問題になりました。また、工場の"自動化の遅れ"から、コロナ禍で多くの社員が出社できなくなった際に操業停止状態に追い込まれる企業もありました」

こうした課題が明白になり、社会では今、急速にデジタル化や自動化が進められているといいます。

働く現場では、効果的なデジタル革新が必要に

テレワークを筆頭にキャッシュレス決済などが一般的になってきたように、社会は「非接触型社会」へと進んでいます。そしてコロナ禍も4年目となろうとしている今、求められているのは「情報の信頼性向上」だと松本さんは話します。

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「例えば、先ほどお話した手集計による感染者数。確実性の低い数値を分析すると、結果の信用性も下がります。また最近、旅行支援が始まりましたが、ワクチンの接種証明は口頭でOKといったアナログのやり方が通ってしまうと、再び感染拡大につながる恐れも。より"情報の信頼性"の向上が求められています」

非接触型社会の中でもまだまだアナログな手法が採用されている現実があるため、社会には「効果的なデジタル革新」が求められています。しかし、日本では意外なことに「デジタル革新」は25年も前に起きていたと松本さんは話します。

「25年前、パソコンが爆発的に企業に普及しましたよね。その当初と今とで、やっていることは大きく変わっていないんです。仕事の現場では、メールも表計算ソフトも文章作成のWordもみんな25年前と何ら変わらず、私たちは今も使用しています」

一方、プライベートの現場では、25年前に流行したポケベルはスマホに変わり、アナログ放送が地デジ放送になり、ビデオはオンデマンドや定額サービスへと変化。「この変化の正体は何か。実はこれもデジタルなんです。世界は今、デジタルで進化をし続けているんです」と松本さんは語ります。

デジタルトランスフォーメーションはIT活用の先にある

日本では、去年9月にデジタル庁が創設され、松本さんが所属する富士通社も「IT企業からDX企業へ」という宣言を発表。DXとは、デジタルトランスフォーメーションのことですが、松本さんは「DXとは何か」をこう語ります。

「例えば、宅配サービスを考えてみましょう。紙注文からスマホやPCでの注文に変わっただけでは単なるITの活用です。さらに、注文情報をピッキングや配送のシステムに連携しておけば、集まり次第すぐに配送できるようになりますが、DXはその先にあります。利用者のニーズは、"ほしいものを使い続けたい"ということですよね。デジタルを使ってそれらが実現できていれば、わざわざ通販のボタンなどを押さなくても済むわけです。買うという行為そのものがない。その世界観がDXなんです」

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その例として、2020年4月に起きた「トイレットペーパーがなくなる」という噂による騒動を紹介。

例えばペーパーホルダーにセンサーが付いていて、トイレの紙がなくなる前にペーパーが届くというサブスクのサービスがあると想定してみましょう。定額支払いなので、買うという行為そのものを気にする必要がなく、お店に行列ができるという騒動も起きなかったのではないか、と松本さんは分析しました。

ITは、仕組み目線。DXは、利用者目線

さらに、ITは今使っているツールを便利なデジタルのツールに置き換える「仕組み目線」であるが、DXは「利用者目線」に立ち、利用者の価値観をデジタルで変革することだと話す松本さん。

「例えば、レンタルビデオ屋さんは、商品の在庫管理や自動貸し出しなどをITを駆使して行ってきましたが、今は有料動画配信サービスが主流となりました。この変化の理由のひとつは、利用者のニーズが、リビングの大画面で見ることではなく、"好きなときに好きな場所で映画を見たい"というものだったこと。実際、有料動画配信サービスを契約している方の7割がスマホを利用して、スキマ時間で映画を見ているというデータもあります」

松本さんは、DXはデジタルを難しく考えず、直感的に「皆のやりたいことって何だろう、それを実現するデジタルは何か」を考えることが大切だと語ります。

能力を生かしていつでもどこでも働くことが可能に

松本さんの所属する富士通社では、DXの推進によって、働き方も"今時"に変わってきているといいます。

「今、富士通では、いつでもどこでも仕事ができる“Work Life Shift”という環境を推進しています。例えば、スマホ1本で、いろいろな仕事ができる。ビジネスパーソンの目的は、満員電車に乗ることやオフィスに出向くことではなく、仕事をすることですよね」

事実、松本さん自身、7割の仕事をスマホで行っているのだとか。同時に、同僚の方々の状況もスマホで確認できるといいます。

「PCもモバイル型で持ち運べるため、もう3年近くオフィスに行っていません。今や仕事は自分の能力を生かして、いつでもどこでも行える時代。デジタルにより、働き方の選択肢が増え、生活そのものが豊かになっていくでしょう」

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社員の声を行動につなげるプログラムで働き方を改革

さらに富士通社では、全社DXプロジェクト「FUJITRA」を本格始動。多様性に富んだ社員の能力・英知を集結し、新しいカルチャーにつなげていこうという目的のもと、持続的にDXを進める仕組みを作り、「経営/ビジネス」と「IT/デジタル」を一体で運営しているそう。松本さんは、具体的な取り組みのひとつとして「VOICEプログラム」を紹介しました。

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「経営陣に現場の意見を直接届けるため、社員の声を集約して"見える化"するプログラムです。例えばリモートワークをしている社員にアンケートを取り、生の声を調査・分析して、見える化。経営層はこの声を元に業務改善や施策立案などをスピーディに行っています。「声」を起点に「行動」の循環を生み出すのがこのプログラムの特徴です」

講演会の後半では、さらに富士通社が進める働き方改革の好例が多数紹介されました。

富士通が巻き起こす働き方の変革。驚きの事例を多数紹介!

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