お金の種類と作る場所
——お金はどこで作っているの?
お金にはいくつかの種類があります。多くの皆さんがお金と言ったときにイメージするのは1,000円札や100円玉ですね。これを「現金通貨」と言います。
そのほかに、銀行に預けられて、クレジットカードの支払いに使われたり、銀行が他の会社に貸したりするお金があって、これを「預金通貨」と言います。どちらも大事なお金ですが、ここでは「現金通貨」について話をすることにします。
皆さんが手にするお金には、100円玉のような小銭と1,000円札のようなお札がありますが、それぞれ「硬貨(こうか)」「紙幣(しへい)」と呼ばれていて、それぞれで作る場所が違います。
硬貨は、「独立行政法人 造幣局」で作られます。本局が大阪市にあり、そのほかに、さいたま市と広島市に支局があります。
紙幣は「独立行政法人 国立印刷局」で作られます。こちらは、東京都港区に本局があり、全国に6つの工場(東京工場、王子工場、小田原工場、静岡工場、彦根工場、岡山工場)を運営しています。
お金の量を決める人
——作る量はだれが決めているの?
では、造幣局・国立印刷局で作られる硬貨や紙幣の量は誰が決めているのでしょうか。 造幣局も国立印刷局もお金を作ってはいますが、あくまでも作っているだけで、お金を「発行」するところではありません。そして硬貨と紙幣では、この発行するところも異なります。
紙幣を発行するのは「日本銀行」です。日本銀行は、「銀行の銀行」や「政府の銀行」という役割を果たしていて、紙幣を発行する権限を持っています。そこで、紙幣のことを「日本銀行券(日銀券)」と呼ぶこともあります。
硬貨を発行するのは日本の「政府」です。ただし、造幣局で作られた硬貨はすべて日本銀行に預けられます。そしてそれらが銀行から引き出されたり、お店でおつりとして使われたりして、皆さんの手元に届くのです。
こう言うと、日本銀行が紙幣や硬貨を作る量を決めているように思われるかもしれませんが、お金を作る量を決めるのは「財務大臣」です。財務大臣は「財務省」というお金を専門とする政府の機関をまとめる人ですね。お金はすべて、財務省でつくった計画にそって作られているのです。
お金の量の決め方
——お金をいっぱい作ればみんながお金持ちになれる?
皆さんの中には、政府がたくさんお金を作れば、国が豊かになって、そこに暮らすみんながお金持ちになれると考える人もいるかもしれません。しかし、残念ながら、そうではありません。
お金をたくさん作っても、それがすべて発行されるわけではありません。お金が発行されるのは、お金が使われるときです。そして、お金がたくさん使われるのは、景気が良くなって経済活動が活発になったときや、物の値段である「物価」があがったときです。
物価があがった場合、同じものを買うのにそれだけたくさんのお金が必要になるので、皆さんのお財布の中のお金が増えても、お金持ちになったとは言えないわけですね。
このように物価が上がり、お金の価値が下がる状態のことを「インフレ」と言います。適度なインフレであればよいのですが、極端なインフレが起こると、お金への信頼がなくなり、国の経済が崩れてしまいます。こうしたことにならないよう、日本銀行はお金の発行量を調節する必要があるのです。
小林航(こばやし・わたる)
政策情報学部教授。博士(経済学)。一橋大学大学院経済学研究科卒業後、財務省財務総合政策研究所で主任研究官を務め、2010年から千葉商科大学で教鞭を執っている。「日本経済論」や「地方財政論」など経済と財政に関する講義を担当。中学生の時にはじめて消費税が導入され、「みんながこれだけ嫌っているのになぜ消費税が必要なの?」という疑問を持ったことが、経済学を学び始めたきっかけ。
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