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コラム

今回は、「フェアトレードチョコレート」の背景や、フェアトレードチョコレートの魅力についてご紹介します。

チョコレートの生産地で起きている「児童労働」の現実

チョコレートに含まれる成分「カカオポリフェノール」が注目されるようになり、チョコレートの消費量は世界的にさらに拡大しています。しかし、世界的な「チョコレートブーム」が起きても、カカオ生産者がその恩恵を受けているとはいえないようです。

チョコレートの原料はカカオ。カカオは赤道の南北20度以内の熱帯で栽培されます。
以下は、カカオ豆の主な生産量の多い国です。

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出典 Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO) - FAOSTAT - Production, Crops, Cocoa beans(2021年4月)

上図を見てわかるように、コートジボワールとガーナで世界の生産量の約6割を占めています。他に同じ西アフリカ地域のナイジェリア、カメルーン、アジアのインドネシア、南アメリカのブラジル・エクアドルなどが主な産地です。

カカオ栽培の労働者の中にはたくさんの子どもたちもいて、「児童労働」が問題となっています。

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世界全体で児童労働をする子どもたちは1.5億人に上り、子どもたちが働く場所の代表的な例としてガーナのカカオ農園があげられます。2020年6月、ILO(国際労働機関)とUnicefは共同で「新型コロナウイルスの影響により、この20年で初めて児童労働が増加する懸念がある」との声明を発表しています。この問題が現在進行形であることがわかります。

児童労働とは、ILOの定義によれば、「15歳未満の児童の労働、および健康・安全・道徳を損なう恐れのある18歳未満の労働」をいいます。そしてその割合が最も高いのがアフリカです。カカオ農園では今も、子どもが労働を強要されているという、悲しい現実があります。

「フェアトレードチョコレート」で生産者を支援

なぜ子どもが働かなくてはならないかといえば、カカオ栽培が労働集約型にも関わらず小規模農園が多いこと、そして、そこで働く労働者の賃金が少ないことが原因です。大人が働くだけでは家族を養うことができないから、子どもも農園で働くことになってしまいます。労働時間は長く、ナタでカカオの実を割るような危険な仕事や重いカカオのカゴを運ぶ重労働もあります。しかし大変な思いをして家族で働いても生活は楽にならず、貧困から抜け出せないという現状です。

カカオ農園で働く人の賃金を増やし生活を安定させるためには、カカオの購入価格を上げる必要があります。これが「フェアトレード」の考え方です。

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国際フェアトレード基準にもとづく取引では、カカオ生産者に対して、カカオを購入する価格を市場価格より高く定め、長期で取引を継続します。同時に、取引金額にプラスして一定の金額を生産者の組合などに「フェアトレード・プレミアム」として支払います。これは、農園のインフラ整備、学校や病院の建設など、社会資本の充実のための資金となります。フェアトレードのプログラムは、農薬や化学肥料を減らして自然環境を守る栽培を助けます。

フェアトレードによってカカオ生産者の収入が増えれば、多くのメリットがあります。

  • 子どもは労働せず、学校に行ける
  • カカオ農園は経営が安定し、品質のよいカカオ作りができる
  • 農薬や化学肥料を減らして農園や周辺の環境が守られる

つまり「フェアトレードチョコレート」は、私たちにもメリットがあります。安心で上質なチョコレートをこれから先ずっと食べられるためにも、大切なとりくみなのです。

しかし残念ながら、フェアトレードチョコレートが十分に広まっているとはいえません。

フェアトレードインターナショナル(Fairtrade International、FI)の年次レポートに以下の図表があります。フェアトレードの対象である作物の産出量全体に占めるフェアトレードの割合を示しています。青色が従来型の取引、紫色がフェアトレードです。

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出典 Fairtrade International (https://files.fairtrade.net/publications/2018-19_FI_AnnualReport.pdf)

2018年現在、バナナ、コットン、コーヒーではフェアトレードが50%以上にまで拡大していますが、カカオは13%と少ないシェアです。チョコレートの分野ではもっとフェアトレードを進めていかなくてはならないということがわかります。

カカオ農園に対するフェアトレードの取り組みは1990年代に始まっていますが、なかなか進展せず、西アフリカなどの農園における低賃金や児童労働の問題はとても根深いということを、私たちは知っておく必要があります。

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チョコレート消費大国・日本のフェアトレードはどこまで進んでいる?

カカオを生産するのは赤道近くの国。一方、ココアやチョコレートを消費するのは欧米や日本などの先進国です。日本のチョコレート消費量は世界のなかでどれくらいでしょうか。

各国のチョコレート消費量と一人あたり消費量
(2017年 数字はトン)
  国内消費量 一人あたり消費量
ドイツ 917,885 11.1
スイス 82,234 9.7
イギリス 532,175 8.1
デンマーク 39,920 6.9
スペイン 208,760 4.5
フランス 225,920 3.4
イタリア 188,715 3.1
日本 274,067 2.2

※アメリカはデータなし
出典 日本チョコレート・ココア協会(http://www.chocolate-cocoa.com/index.html)

上記の中で一人当たりのチョコレート消費量が最も多いのはドイツ、次いでスイス、イギリスなどとなっています。いずれの国も日本よりはチョコレートの一人当たり消費量が多いですが、この統計では国全体の消費量は上記の国のなかでドイツ、イギリスに次いで日本が3番目です。

また、日本のチョコレート消費量は年々増加しています。

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出典 日本チョコレート・ココア協会(http://www.chocolate-cocoa.com/index.html)

とくに直近10年の伸びが大きく、10年で25%近く増加しています。日本は世界のなかでも大きなマーケットを有する"チョコレート消費大国"といえるでしょう。

チョコレート好きな人が多い日本ですが、フェアトレードチョコレートへの取り組みはどうなっているでしょうか。

日本のNGO「ACE」は、「世界の子どもを児童労働から守る」というテーマの下、1997年に設立されました。設立してまもなく、カカオ農園の児童労働をなくすためガーナに入り、現地の村で草の根的に活動するようになりました。

「2009年2月からガーナのアシャンティ州とアハフォ州の10村で活動を行い、2019年までに、555人の子どもたちを児童労働から守り、学校へ通えるよう支援してきました。」

(2020年9月のプレスリリースより引用)

ACEは2009年、「しあわせへのチョコレート」プロジェクトをスタート。地道な活動が実をむすび、世界カカオ財団、ガーナ政府やJICAも動きだしました。

JICA(国際協力機構)は、2020年1月に「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」を設立。ロッテ、森永製菓など日本の企業や団体が参加登録しています。

2020年3月には、ガーナ政府が「チャイルドレイバー・フリー・ゾーン(児童労働のない地域)」(CLFZ)を設立しました。

今までなかなか進まなかった「フェアトレードチョコレート」の取り組みが大きく動き出す気運が生まれています。しかし一方、それを阻む暗雲として「コロナ禍」があります。2020年は世界の人の往来が制限され、プロジェクトをすすめることが難しく、活動できない期間の世界的な景気後退により、カカオ生産者の生活がさらに困窮することが心配されています。

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まずはフェアトレードチョコレートを1つ買ってみよう。特に、カカオ70%など「ハイカカオ」好きな方は要チェック!

フェアトレードを応援するために私たちができることは、フェアトレードチョコレートを買うことです。「フェアトレードチョコレートって高いのでは……?」と思う人もいるかもしれませんが、手ごろな価格のものも数多く売られています。

そして、「フェアトレードチョコレートが好き」という人の買う理由は「カカオ生産者を応援できるから」よりも、「おいしいから」「品質に安心感があるから」ということが多いようです。指定農園のカカオ豆を使用していて香りや風味に特色があるこだわりのチョコレートが多く、自分好みの一品を発見する楽しみもあります。

一般的なチョコレートとフェアトレードチョコレートの比較

  一般のチョコレート フェアトレードチョコレート
価格 安い 比較的高い
原材料 一般のカカオ豆 フェアトレードのカカオ豆
産地 不特定 特定
カカオ豆の原産地(または生産地域)や農園が商品に表示されていることが多い
使用原材料 一般的な原材料
※原材料にこだわった商品もある
「乳化剤不使用」「他の原材料もオーガニックやフェアトレード商品」など、使用する原材料にもこだわりがある場合が多い
生産量 大量生産
手に入りやすい
比較的少量生産
手に入りにくい
※期間限定、季節限定の品が多い

近年、カカオ70%、カカオ88%というような、甘さ控えめでカカオ成分が多い「ハイカカオチョコレート」がチョコ好きな人やカロリーを気にする人の間で人気です。フェアトレードチョコレートでは原材料のカカオ豆を厳選しており、"XX農園のカカオ豆使用"などの表示がされたハイカカオチョコレートの品も多く販売されています。

ハイカカオやダークチョコレートでカカオそのもののおいしさを味わいたい方には、特にフェアトレードチョコレートがおすすめです。カカオ豆そのもののおいしさ、香りをストレートに感じられるし、産地ごとの微妙な味わいの違いを楽しむこともできます。もちろん、ミルクなどマイルドな味が好みの方向けのフェアトレードチョコレートも多種多様に揃っています。

以下に、日本で買いやすいフェアトレードチョコレートをご紹介します。

ピープルツリー フェアトレードチョコレート(ピープルツリー)

30年の歴史がある日本のフェアトレードブランド。板チョコやフィリングタイプがあります。各種フルーツ、抹茶など多彩なフレーバーがあるのも魅力。販売は秋冬のみで、シーズンごとに新しいフレーバーが登場します。

オーガニック&フェアトレード ダークチョコレート(イオン)

イオンの自社ブランド「トップバリュグリーンアイ」シリーズで、フェアトレードかつオーガニックのチョコレートが購入できます。フレーバー違いでカカオ72%・80%と2種類あり、フェアトレードカカオの味わいをしっかり感じられます。

フェアトレードチョコレート(カルディコーヒーファーム)

ガーナのフェアトレードカカオ豆を使用し、油脂分として国際フェアトレード認証ココアバターのみを加えたというこだわりの品です。

クランベリーチョコ(第3世界ショップ)

フェアトレード&オーガニックのチョコとオーガニック栽培のクランベリーを使用。手軽な粒チョコタイプです。他にコーヒー、塩などのフレーバーがあります。ほかにも各種のフェアトレードチョコレートを販売しています。

フェアトレード&オーガニック ダークザクロ(ショコラステッラ)

スイスのフェアトレードチョコレートのブランド「ショコラステッラ」は通販などで日本でも買いやすい品です。砂糖やココアバターにもこだわりとおいしさを追求。ミルク、オレンジなどのフレーバーもあります。

まずは興味をひかれた品をひとつ購入してみてはいかがでしょうか?

Bean to Barなど、他にもある"エシカルなチョコレート"のスタイル

「フェアトレードチョコレート」という名称は、フェアトレード認証を受けた商品しか名乗ることはできません。しかし、フェアトレード認証を受けていなくても生産者や環境に配慮した商品・企業があり、チョコレートのおいしさを追求した結果、エシカルなチョコレートにたどり着いたという例も多数あります。日本でも数年前から注目されている「ビーントゥバー(Bean to Bar)」チョコレートについても知っておきましょう。

ビーントゥバー(Bean to Bar)とは

ビーントゥバー(「ビーン=カカオ豆」から「バー=板チョコレート」)とは、2000年頃にアメリカで始まったチョコレートのスタイルです。

多くの場合「シングル・オリジン(ひとつの原料)」を重視し、特定の地域や農園のカカオ豆に最小限度の他の材料を加えて最終製品のチョコレートバーを作っており、この名称がつきました。個人あるいは小規模な会社が小さな工房でこだわりのチョコレートをカカオ豆から作るスタイルです。近年は日本でもビーントゥバーのブランドが増えてきました。

ビーントゥバーではカカオ豆そのもののクオリティが最も重要。だからカカオ農園に真摯に向き合い、生産者を尊重しています。また、ビーントゥバーの事業者は仕入れから販売までを手がけ中間マージンが発生しないため、生産者に対して十分な対価を支払うことが可能です。チョコレートのクオリティを追求した結果、ビーントゥバーは必ずしもフェアトレード認証ではありませんが、消費者と生産者どちらにもいい結果がもたらされています。

Dandelion Chocolate(ダンデライオン・チョコレート)

本拠地はアメリカで海外拠点として日本・蔵前にファクトリー&カフェがあります。ビーントゥバーをメインとしたチョコレートの製造販売を行うブランドです。

Minimal - Bean to Bar Chocolate -(ミニマル - ビーントゥバーチョコレート -)

ビーントゥバーのブランドの先駆者。「カカオと砂糖のみ」からつくるハンドメイドのチョコレートです。

Dari K(ダリケー)

京都のチョコレートブランド。生産地に足を運び自らカカオ豆を調達し、京都の抹茶などと合わせて独自のチョコレートスイーツを製造販売しています。

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まとめ~生産者を応援する気持ちでチョコレート選びを!

世界でフェアトレードの試みが続けられていますが、カカオの生産地には依然として児童労働や貧困の問題があります。そんな今、私たちにできることは、フェアトレードチョコレートを購入して応援すること。

今回ご紹介したように、手頃な価格で購入できるフェアトレードチョコレートもたくさんあります。一方、価格は高いけれど魅力的で「一度は食べてみたい」と思うチョコレートは、特別の日や贈り物として手に取ってみてはいかがでしょうか。

今後のチョコレート選びに、ぜひ「フェアトレードチョコレート」を選択肢に加えてみてください。

この記事に関するSDGs(持続可能な開発目標)

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