大学院 最新情報 2019年度

お知らせ

会計ファイナンス研究科柴田冬樹さんが、公益財団法人租税資料館「第28回租税資料館奨励賞」を受賞しましたのでお知らせします。

第28回租税資料館奨励賞

公益財団法人租税資料館「第28回租税資料館奨励賞」受賞
柴田 冬樹さん(会計ファイナンス研究科)
標題:「仮想通貨・トークンに係る課税上の諸問題—所得課税の現状と今後の課税の在り方を中心に—」

租税資料館では、税法学ならびに税法と関連の深い学術研究を助成するため、税法等に関する優れた著書及び論文に対して、毎年租税資料館賞を選定しています。「租税資料館賞」は、税法等に関する著書及び論文に対する表彰であり、このうち大学院生の論文を対象としたのが「租税資料館奨励賞です。」
※租税資料館賞の詳細は、租税資料館公式ウェブサイトよりご覧いただけます。
URL:http://www.sozeishiryokan.or.jp/award/index.html

受賞者コメント

この度は、租税資料館の名誉ある賞を賜り、至極光栄に存じます。
受賞した論文は「仮想通貨・トークンに係る課税上の諸問題—所得課税の現状と今後の課税の在り方を中心に—」です。

ブロックチェーン等のIT先端技術、貨幣論や経済学、民法などの私法等の観点から、学際的に暗号資産(仮想通貨)を捉え、約15か国ほど暗号資産税制を比較し、日本の所得税法、法人税法、消費税法、相続税法等を論じています。

ブロックチェーンは分散型台帳技術とも呼ばれます。「台帳」ですから、会計においては「帳簿」としての可用性があり、「分散」されているため高度な検証可能性を備え得るものです。また、税務においては、キャッシュレス化と組み合わせることで、脱税を非常に困難にする可能性を秘めています。

執筆にあたって、講義内外を問わず、本研究科の先生方から示唆に富むたくさんのご助言をいただきました。様々な実務経験や専門分野を有する先生方が多数在籍する本研究科であったからこそ完成に至った論文です。この場をお借りして心よりお礼申し上げます。

指導教員コメント

柴田さん、租税資料館賞の受賞、おめでとうございます。熱意を持って取り組んだ研究の成果が実り、担当教員としても、非常に喜ばしい限りです。

先般、ワシントンで開催されたG20では、米国のフェイスブックが計画しているリブラ等の暗号資産(仮想通貨)が議論されましたが、未だにリスクや懸念があるということで各国が共通認識を持ち、閉幕しました。リブラは価値が法定通貨に裏付けられているステーブルコインですが、それでも各参加各国の懸念は払拭されませんでした。ただ現実には、我が国においても暗号資産(仮想通貨)が拡大し、その税逃れも横行しており、法人税、所得税を中心に、100億円の申告もれが指摘されていると聞いています。国税当局の調査もかなり実施されていますが、肝心の把握された利益の課税方法についての法的整備は、必ずしも追い付いていません。柴田さんの論文でも指摘していますが、2000種以上ある暗号資産(仮想通貨)を一義的に取り扱ってよいのかという問題が根底にあり、今後の課税当局の更なる検討が必要です。

柴田さんは、まだ先行研究、専門書等も少ない状況下で、積極的に情報収集を行い、かつ興味を持って、論文執筆に取り組みました。その研究内容、提言は、課税当局にもインパクトを与えるものだと感じています。

本学大学院では、各ゼミでの判例研究、論文テーマの決定、研究企画書の策定、中間発表等、いくつかの段階を経て、論文完成へと導いています。これらの各ステップで、真摯に向き合い、努力を重ねれば、きっといい論文に仕上がります。


左:齋藤 幸一客員教授(指導教員) 右:柴田 冬樹さん

過年度の租税資料館賞、租税資料館奨励賞受賞者

  • 平成30(2018)年 第27回
    標題:「投資促進税制としての租税特別措置法の課題—投資誘因としての租税特別措置とパテントボックス税制の検証—」
    経済学研究科(中小企業診断士養成コース)修了生 新垣 厚氏(指導教員:田井 良夫教授)
  • 平成27(2015)年 第24回
    標題:「国際的な課税権の確保と税源浸食への対応—国際的な二重非課税に係る国際課税原則の再考—」
    会計ファイナンス研究科客員教授 居波 邦泰氏
  • 平成26(2014)年 第23回
    標題:「寄附金税制に関する一考察—「寄附金控除の年末調整制度化」を中心として—」
    会計ファイナンス研究科修了生 上村 大輔氏(指導教員:有馬 恒夫客員教授)
    標題:「消費税の課税に関する一考察—社会保険診療に対する非課税措置といわゆる「損税」について—」
    会計ファイナンス研究科修了生 金原 俊輔氏(指導教員:木本 聡子教授)
  • 平成24(2012)年 第21回
    標題:「法人課税信託における租税回避への対抗策—外国信託を利用した複層化スキームによる租税回避への対抗策—」
    会計ファイナンス研究科修了生 扶持本 泰裕氏(指導教員:本庄 資客員教授)
  • 平成23(2011)年 第20回
    標題:「相続税における居住ルール」
    会計ファイナンス研究科修了生 根岸 英人氏(指導教員:本庄 資客員教授)