リール第1大学工業技術短期大学A(春期)
商経学部商学科 古川万倫
- スリ/難民・移民
フランスへ出国する前に懇親会やプライベートで渡航経験のある人から話を聞くと、フランスではスリに気を付けたほうがいいとまず言われた。ヨーロッパは中東やアフリカといった情勢の不安定な国や地域が周辺にあるため、多くの移民を受け入れている。しかし文化や言語に違いがあるせいで職に就けず生活が困窮する人々がいるというのを調べて知った。実際、パリの歩道には金銭類を乞う人たちがいた。その人たちは動物を連れて座っていることが多く、なぜこんなにもペットを連れているのだろうかと考えていたが、もともと飼っていたのを自国の情勢のせいで一緒に連れてきたはいいものの、養えなくなったのだろう。観光地では、目が合うと近づいて物を売ろうとしてくる人たちがいた。私は無視して歩こうとしていたが、店員に腕を掴まれかけた。日本人は「金を持っている」「気が弱い」「警戒心がない」とよく聞くので売る側にとっては手っ取り早く金が稼げるのだろう。私は腕を掴まりかけて逃げた時、「こんな物騒なのか」と思ったが、今思えば彼らも必死だったのだろう。日本は難民や移民の受け入れに関しては厳格なのでスリなどは身近なものとしてではなく、椅子に荷物を置いて移動できる安全な国なのだと身をもって認識した。今後少子高齢化のため移民の受け入れが活発になると新聞に掲載されていたのを見て、今後より日本に外国人が入ってくるだろう。その時パリのようなことにならないように、一国民として国の政策により興味関心をもつべきである。 - マスク
空港に着いた時から感じていたが、ほとんどの人がマスクをしていなかった。空港から出たら誰もしていないといっても過言ではなかった。日本では予防目的も兼ねてマスクをしている。加えて、最近では若者の間でファッションの一環としてマスクを着用することも多い。しかしフランスでマスクをしているとじろじろと見られた。新型コロナウイルスが騒がれていることもあり、マスクを着けているアジア系の旅行者は警戒されるのだろう。「中国人ですか?」と聞かれることも少なくはなかった。ヨーロッパでは病人や感染者が他に移さないためにマスクをするのであり、予防のためにつけることはないのだ。私たちは途中からマスクを外して過ごしたが、マスクを着けたまま授業に参加していた場合、コミュニケーションに障害をきたしていた可能性もあっただろう。日本から消毒スプレーやアルコールシートなどを持参したが、フランスで過ごしていると日本が中国から近いとはいえ対策が過激すぎるのではないかと思えてしまうほどだった。初の海外ではあるし対策をするに越したことはないが、郷に入っては郷に従えという言葉があるように環境に沿った行動が重要だ。 - ジェスチャー/ポーズ
インターナショナルコミュニケーションの授業で、国によって手のポーズに込められた意味が違うという内容が紹介された。指で数字を数えるとき指の折る順番が違う、日本で「お金」を表すポーズはフランスでは「ゼロ」や「何もない」を表すなど紹介された。その中でも最も印象に残ったのがギリシャだ。日本で「平和」を表し写真撮影でもよく用いられるピースサインだが、ギリシャでは「地獄に堕ちろ」という意味だったのである。また手をパーに開いて見せるのもピースと同じく「地獄に堕ちろ」という意味になるらしい。日本で気軽に使われているポーズなためより衝撃的だった。海外で写真を撮ってもらう際にはなるべくピースを控えようと事前に話していたが、なぜなのかはわかっていなかった。しかし授業で聞いて危ないことだと分かった。今回はフランスなので良かったが、知らないまま軽い気持ちでポーズをとっていたら、人によっては不快にさせる可能性があるし、危険な目に遭うこともあっただろう。グローバル化の進む中、海外旅行においても日本国内にいるとしても旅行先のみならず他国の文化や事情を把握しておくことが大事である。 - 時計
いろんな教室で授業を受けていて感じたことがある。教室内に時計が見当たらないのだ。図書館にも時計はなく、駅の時計に至っては壊れて時間が止まっている。また、始業のチャイムが鳴っても学生が全然来ないのだ。10分程遅れて来た学生もいた。日本は時間にシビアだといわれる。電車の時間や授業など、あらゆることをきっちりとこなす。それは利点であるし誇らしいことでもある。一方で、授業中に「あと十何分もある。」という声をよく聞く。そして授業があと数分となるとあからさまに気が緩む生徒が多い。筆箱や授業資料を片付けて、あとは帰るのみという態度でいる。一番困るのは談笑を始めることだ。時計があるからこその弊害だといえる。フランスで授業を受けていると時計がないからなのかもう終わりかという気分になることがよくあった。時計のない教室は新鮮な経験だった。 - 図書館
授業が終わってから学食が開く時間まで図書館にいる機会がありよく図書館に通っていたが、開放的で快適な場所だと思った。日本の大学は本を読むことに重点を置いているが、フランスの図書館はパソコン作業や小会議室をメインとした設計になっていた。テーブルとイスが両立可能なS字型のプラスチック製品があった。プラスチックなおかげで軽く移動も楽だ。また、カフェを図書館に置いたりしたり、通路用以外の階段に座椅子を置き椅子代わりにするなどフラットな構造となっていた。しかし中には邪魔されたくない人もいるだろう。そういう人のために置かれてあったのが耳栓だ。見た目はガシャポンだが、1ユーロを投下して回すと耳栓が出てくる。ポップな見た目かつ実用的な面をもつ耳栓ガシャポンはとても良い発想だ。 - 飲食店
飲食店は日本との文化の違いが最も分かったところだった。リールやパリで食事をとった時、注文してすぐに会計をした。これはいい発想だと思う。飲食店など混んでいる時にレジに従業員を向かわせることや、レジに待っている客がいないか確認する必要がないからだ。また、無銭飲食などの危険性もない。それにレジスターを購入するための出費もいらない。人員不足などで困っている店に活かせるだろう。
飲食店でもう一つ気になったのが、フランス人学生が頼んだカクテルを回す棒が紙製だったのだ。使いすぎると折れてしまうデメリットがあるが、プラスチックのごみを無駄に排出しなくて済む。プラスチックのポイ捨てによる環境問題が話題となっている中での対策が目に見えて分かった例だった。 - 電力
寮で困ったことがあった。電気ケトルが使えなかったのである。電子レンジがあったのでマグカップに移してどうにか温めることができたが、電気ケトルがなぜ使えなかったのか現地ではわからなかった。日本に戻って家族に話したところ、どうやらフランスと日本の電力事情は違うらしい。日本は商品の電力量に合わせて電力が供給され、電力過多になるとブレーカーが落ちるが、フランスではそもそも供給される電力が決まっているらしい。つまり電気ケトルが沸くために必要な電力が寮には送られていなかったのだ。日本とフランスで電圧が違うことはわかっていたが変圧器でも使えなかった理由に納得した。
始めての海外にあたって、正直上記のように書くような大きな違いがあるとは思わなかった。予想をはるかに超えた文化の違いを体験して、衝撃と興奮を覚えた。文化の変化に戸惑うことは多々あった。また海外渡航経験に加え、飛行機すら乗ったことすらもない私にとっては緊張や不安が伴うプログラムだったが、同行者やフランスの学生、現地の人々などのフランクさと親切心に救われ無事帰国し、楽しい経験となった。またフランス語への更なる興味や、日本をより客観視できる感性を持つことができた。機会があれば友人を誘ってもう一度参加したい。そして自費で海外旅行にも行きたい。