モスクワ大学(夏期)
交換プログラムに参加して
国際教養学部 國光瑞希
私が今回のプログラムに参加した報告として挙げたい体験は大きく4つあります。
一つ目は、自分が先行していない分野の授業を、しかも英語で学んだという経験です。モスクワ大学ではロシアの政治科学を学びました。私は国際教養学部に所属しているので、政治はほとんど勉強することがありません。そのため今回のプログラムは大きな挑戦でした。日本国内の政治においても多くの知識のない私が、異国の政治やその問題についての授業を受けることは簡単なことではありません。
授業初日、私たち日本を含め世界の7カ国からの生徒がプログラムに参加しました。とても緊張したことを昨日のように覚えています。最初は私もそこまで深い内容の授業はやらないだろうと思っていました。しかし初日の内容は旧ソビエト連邦の政治文化の授業でした。ロシアもまた政治への参加率が低いこと、国民が政府に不信感を抱いていることなど、それまで社会主義で少し閉鎖的なイメージがあった私には衝撃的な90分でした。その後も、ロシアの政治家は良いイメージを持たせるために地方などに訪問する時の記念撮影には子供や祝福されているものを使うこと、今の政治の在り方を正当化するためにスペシャリストが作り上げた政策など挙げればきりがありません。政治学とはこういうものなのでしょうか。またサポーターとして参加していたロシアの学生も地方の選挙参加率の低さを問題として提起するなど、同じ学生の政治への関心の高さも感心しました。しかしそれはロシアの学生だけでなく、各国の学生が移動や休み時間などに彼らの国々の政治的問題を話すなどしており、自分が日本の政治の現状について知識があまりないことが恥ずかしいと思いました。これは、今回のプログラムに参加しなければ体験することのできなかった大きな出来事です。
二つ目は芸術に溢れたモスクワの市内観光です。モスクワ大学そのものがまるで立派なホテルであるかのように、周辺や中心街に訪れると360度素晴らしい景色でいっぱいでした。ロシアは国教がロシア正教会としていることもあるためか、多くの建物が宗教や教会などを意識した造りになっていました。そして、その建物は全てと言っても過言ではないくらいに高さがあり大きいです。これもまた、世界最大の面積を誇るロシアだからできる構造だと思いました。特におすすめしたいのは、引率してくださった高橋先生おすすめのモスクワ市内クルーズです。日本円にしておよそ1,000円程度でモスクワを一望できるアクティビティです。私は夜に船に乗りましたが、電車や徒歩の移動では決して見ることのできない素晴らしくロマンティックなモスクワの街を目に焼き付けることができました。次回以降でロシアに行く方はぜひ体験してほしいです。
三つ目は食文化です。ロシアといえばおふくろの味であるボルシチが有名ですが、私が日本で口にしたものとは大きな違いがありました。ロシア初のボルシチは大学内の学生食堂で食べたのですが、これがなんと冷製で、日本で食べたものよりビーツのせいもあってか紫で驚かされました。また、上にサワークリームが乗っていたことも印象的でした。最終日にまた食べた際にはお馴染みの温かいスープでしたが、初めて食べた紫のボルシチの方が強く印象に残っています。
最後はロシア人の温かい人間性です。どうしても日本に住んでいると日本人は平和ボケなどと言われがちですが、それでも海外に行けば気が引き締まるものです。特に私は行く前から勝手な偏見ながらロシア人には冷たいイメージがありました。しかし、空港に着いて地下鉄に乗る際にスーツケースを、通りすがりの男性が階段下まで下ろしてくれました。その場にいた私たち全員が驚きました。観光客だからとも考えたのですが、大学に着いてからも現地の先生を始めとするロシア人学生が手厚い歓迎をしてくれました。授業の後に外国人留学生をケーブルカーに乗せてくれたり、私たちが個人的に行きたかったカフェの最寄りまで用のついでにと送ってくれたりしました。常に沈黙の時間が少なく済むように、留学生それぞれに、その国や政治について質問をしていました。彼らの明るく一生懸命に私たちを退屈させないようにという思いが伝わり、授業以外の時間を本当に有意義に過ごすことができました。
今回のプログラムではロシアで体験したことについてまとめてきましたが、日本から一歩出ると見える世界が大きいことに気づかされます。これを機に私は、次回は来年のメキシコ、グアナファト大学のプログラムに参加したいと考えています。次回もそうしたいと今から考えてしまうくらいに素晴らしい9日間を過ごすことができました。