交換プログラム(インド)

サー・パダンパット・シンハニア大学(春期)

国際教養学部 長谷川宙美

16日間のSPSU交換プログラムに参加した。私自身、国外での2週間の滞在は初めてであった。滞在中に起こった・体験した出来事の全てが貴重なものであったと振り返ることが出来る。そこで、自分がどう感じたかを出来事ごとにまとめていく。また、時系列は順不同である。
初日の出国時のことである。一緒に参加するはずだった先輩が、中国への渡航歴の問題で、インドへ入国ができないことが発覚した。正直、新型コロナウイルスを他人事だと思っていた。しかしこの出来事から、一気に身近に感じた。文化的特徴とは違うものとなるが、新型コロナウイルスというタイムリーな出来事に関連して、変化した価値観について述べる。現地では、マスクを付けていたこともあるからなのか、とても周りからの視線が強かった。今考えると、東アジアの国々は韓国人なのか中国人なのか日本人なのか、私達でも区別が付かない。判断基準は言語の違いくらいだ。SPSUの学生に、「日本語と中国語は違うものなの?」と聞かれた。日本人である私達でも区別が付かないのに、インド人はもっと区別が付かないと思う。他の国では暴力を受ける・心無い冷たい言葉も浴びせられているということを、SNSやニュースや知った。知らず知らずの内に差別されている事、逆に私達も差別しているのだという事実に気づくきっかけとなった。

SPSUのゲストハウスは、1人1部屋用意して頂いた。清掃・食事の用意の全てを2週間、30~40代の男性3、4人がお世話して下さった。10代の子供である私達のお世話を仕事としている現実に綺麗事だが、心が苦しくなった。カースト制度を自分の身をもって体験した。他国の1人の子供が、カースト制度に難癖を付ける事が出来ないくらい長い歴史がある事は重々理解していたつもりだった。可愛そうと思っている事が現地の人達にとって当たり前の風景のように生活している事が違和感でしかなかった。かわいそうという視点はインドでは違うものなのだと感じたのが、今回のプログラムで一番変化した価値観だと考えられる。もっと詳しく歴史的背景を理解し、知識を深めたいと思った。プログラムに参加した事がある先輩達からは、「お手伝いさんがいてとてもお姫様みたいな気分だよ」と聞いていた。しかし私自身は、そんな良い気持ちはしなかった。

2019年のサマープログラムでSPSUの学生と友達になっていた。その学生達に再会する事が出来た。世界中に散らばっている友人と会う為に、行動を起こす事が出来て良かった。
他に驚いた点として、友好関係を続けていくスタイルも異なっていた事である。特に驚いたのは、通話だ。日本ではLINEを使ったトーク・Instagramを使ったコミュニケーションや投稿などが友好関係をより強めるものとなっている。しかしインドでは、通話が主であった。帰国した今でも、連絡は途絶えない。時差の関係で寝ている事も多々ある。しかし、英会話力の向上・維持にはとても良いと考えられる。彼らに自分の考えていることを自分の言葉で伝えられる能力を身に付けたい。

SPSUキャンパス内で受講したのは、50分の5コマのみだった。インドの経済や世界的に課題である地球温暖化について英語で講義を受けた。理解できる単語で構成された文章は理解できるが、分からない単語が出できた途端、理解が出来なくなった。語彙力が課題だと改めて痛感した。英会話の講義をして下さった先生の言葉がとても印象に残っている。手元のペンを指差し、「これについて考えつく限り説明をしてください。日本語で考えないこと。頭の中で英語のまま考えなさい」と言われた。上手く出来なかった。英語→日本語→英語 の過程ではなく、英語→英語 の素早い情報処理を行い、伝達するトレーニングであった。日本の英語教育では無いような学習内容だった。中でも1番楽しかったのは、学生に教わったヒンディー語の講義だ。自己紹介をする事と自分の名前をヒンディーで書く事を覚えた。

日本で、値引き交渉などは日常的には行われていない。価格に無意識に納得してしまっている。しかし、インドの路上マーケットでの買い物をした時、SPSUの先生が値引き交渉をしてくれた。日本では無い体験だった。

ショッピングモールや寺院などの観光地の出入り口のセキュリティが日本では経験した事がないくらい厳重だった。手荷物検査から始まり、身体検査に男女の検査員が2人常駐していた。買い物が終わった後も、レシートを見せないと出る事が出来ない仕組みになっていた。この時が一番海外にいる事・日本との大きな違いを感じる出来事であった。ショッピングモールでは、新型コロナウイルスの影響でマスクと除菌ジェルが売り切れていた。冒頭でも記したように新型コロナウイルスを身近に感じた出来事であり、今後そのような経験はしたくないとも思った。

16日間お世話になったお手伝いさんに、人生で初めてチップを渡した。チップは、モチベーションの向上に繋がると私は考える。日本にチップ制がない点を当たり前に思って日常生活を送っていた。改めて考えると、日本のサービス精神はどこから生まれてくるものなのか。もしチップがもらえるならモチベーションをさらに向上させる事ができるはずなのに。チップ制度が、海の向こうでは行われているのになぜ導入しないのかなどの疑問も生まれた。

インドでの16日間は、分からないこと・驚いた事の多い日々だった。英会話力の低さから、コミュニケーションに対して少しネガティヴになる場面も多々あった。しっかりと正しい英文法を身に付け、スラスラと話せるように努めていく。約6000kmも日本と離れている地に行けば、考えていることも変わってくると分かってはいた。しかし、本を読むだけでは分からない・話を聞くだけでは分からない事が沢山あった。そのような事に気付かせてくれる体験をさせて頂き、ありがとうございました。タージマハルに行けなかったので、リベンジする為にもまたインドに行きたいと思います。