2016.02.12 UP

実社会で役立つ経営の知識とスキルを学ぶ

学生ベンチャー食堂

千葉商科大学の体育館に隣接する「アゴラ館」。ここにあるのは「千葉商科大学学生ベンチャー食堂」。2011年4月、実学を教育理念とする本学が、授業で学んだ経営の理論、ビジネスの知識を実践する場を学生へ提供し、学生の起業を支援する一環としてスタートしました。

学生にビジネスチャンスを

「千葉商科大学には起業意欲の高い学生がたくさんいる」と話すのは島田晴雄学長。このような学生にビジネスのチャンスを与え、在学中に実践的に経営を学び、実社会で役立つ確かな知識とスキルを身に付けてほしいという思いから、学生ベンチャー食堂を発案しました。出店店舗の選考にあたり、大学では学内での公募を行いますが、食堂経営者は学生と教職員への食の提供という重要な事業を担うため、魅力あるメニューと価格、継続的な運営が可能であることを基本に、収支計画、経営体制、衛生管理などを記した事業計画書を提出することが必要になります。また、選考されて1年間の出店権利を得た後も、大学の「店舗は教室」との考えに立ち、大学からテナント料を無償で提供される以外は、経営者となる学生が開店までの準備をすべて整えることになります。アゴラ館には3店舗が入居できますが、2011年4月のオープンに向けた学内公募では、13ものグループから応募があり、厳正な審査の結果、ホットドッグ、中華、パスタを提供する3店舗が営業を開始。その後、2015年度までに2度の学内公募があり、開業を経験したのは計5店舗となりました。

店舗は教室

2013年4月、パスタ店の閉店に伴い新たにオープンしたのが洋食店「レストランBENI」。経営者は商経学部商学科の紅拓也さんで、開店当時は2年生でした。紅さんは喫茶店でのアルバイト経験から「いつか自分も店を持ちたい」という夢を抱き、学生ベンチャー食堂の学内公募に応募。選考では、調理経験者であること、2年前には他の学食には無かった洋食メニューを低価格で提供することに期待が集まり出店権利を得ました。選考発表会終了後、学長から店の名前には「名前の紅を使っては?」との提案を受け、とても嬉しかったと話します。出店が決まってからは大忙しです。学生ベンチャー食堂の他店舗同様に、飲食店の出店に必要な食品衛生責任者の資格や営業許可の取得、税務署への個人事業の開業届出、什器類の用意などを行う中で、起業までのプロセスを学んでいきました。紅さんの場合は、先に出店していた先輩から、調理機器や設備を譲り受けることで、開店資金を必要最小限に抑えることが出来ましたが、それでも看板やカウンターの外装などを替えるのも全て実費です。看板設置の当日は喜びと同時に責任の重さを感じたそうです。

  • 選考会
  • オープン初日

メニューの見直し、経営改善

学業との経営の両立が求められる中、出店後はいつもより早く大学へ来て、授業前に仕入れや仕込みを行いました。2時限目(10:40-12:10)を受け終えると直ぐに店舗へ戻り、厨房へ立つ日々。学食はお昼休みが勝負時ですから、ゆっくりはしていられません。昼休みが終わると自分の食事もそこそこに、3時限目の授業へ向かうこともしばしばでした。1日の授業を終えると、次は店舗で1日の売り上げを纏めて動向もチェックします。授業で習得した簿記の知識も役立ちました。オープン当時、レストランBENIの看板メニューは「ハンバーグ」。オープンから2ケ月経ち、4月当初の賑わいが落ち着いた頃、BENIへの客足が伸び悩み始めます。一度離れたお客様を取り戻すのは大変です。オープン前から何度も試作を繰り返し、自信のあったハンバーグでしたから、自問自答の日々でした。しかし、友人や教職員などから意見やアドバイスを傾聴して実践したことで、徐々に紅さんのお店のファンも増えていきました。その後もメニューの改良やレシピの工夫にも取り組んだ結果、開店以来、現在までマイナスを出さずに経営することができています。

  • 店内
  • 調理

学外に2号店の出店をめざす

「レストランBENI」の開店から丸3年。紅さんは現在、経営者として店の管理に専念し、調理は雇用したスタッフが担当しています。一番人気はオムライス。定番のケチャップのほかにもソースが選べるバリエーション、大盛りでも500円の価格が魅力です。ふわふわトロトロのオムレツのレシピは紅さんの試行錯誤の賜物。今では男女問わず人気の看板メニューになりました。厨房に立つことは少なくなっても、紅さんの味は多くの利用者のお腹を満たしています。今後は学生ベンチャー食堂での営業を継続しながら、学外で2号店の出店に意欲を燃やす紅さん。在学中に培った経営のノウハウを活かし、事業の発展をめざします。

  • オムライス
  • 紅さん

学生の声

紅さん

「経営をやってみたい」という思いで学生ベンチャー食堂に応募しましました。自分好みの味ではなく、たくさんの人に好かれる味を追求してメニューを考えるのは、とても大変でしたが、できない、やりたくないと思うことも、頑張ってやり遂げることの大切さに気付く大きな経験になりました。経営に不可欠な簿記を授業で学び、学内でその知識を活かして実際に経営ができる環境で、さまざまなことを学ぶことができました。2号店の出店をめざし、これからも頑張ります。

商経学部商学科 紅 拓也(千葉商業高校出身)

学長の声

学生がキャンパス内でビジネスを起こすということは、本学の建学の精神そのものです。学業と経営の両立は簡単ではありませんが、この経験でビジネスに強くなるだけでなく、チャレンジ精神と責任感を持つことの大切さを学び、人間力も高めてほしいと思っています。
顧客を満足させてこそビジネスは発展します。学生ベンチャー食堂という場で、学生や教職員を満足させる味とサービスの追求に挑戦し続けながら、実社会のビジネスに有用な知識を身に付け、将来の産業界で活躍する人材となることを期待しています。

学長 島田晴雄

島田晴雄 学長

卒業生はいま

学生ベンチャー食堂がオープンした2011年4月から営業を続ける「中華食堂つばき」の経営者 王海燕さんは、2012年3月に商経学部経営学科を卒業。同年夏、会社を設立すると同時に、JR市川駅前に2号店をオープンしました(現在は移転のため閉店)。2013年3月には第18回千葉元気印企業大賞奨励賞を受賞。現在も「つばき」は本場の味が楽しめると学生から人気を集めています。