カフェに求められるサービスを考え、実践する
サービス創造学部 コミュニティカフェ・プロジェクト
あふれる緑の間から差し込む木漏れ日が美しい1号館の前庭に、7月5日から3日間「Cafe Green Garden」がオープンしました。じりじりと夏らしい暑さの中、冷たい飲み物や木陰に涼を求める人々が集い、ドリンクを片手に会話を弾ませる様子に笑顔を見せたのは、サービス創造学部コミュニティカフェ・プロジェクトの学生たち。売り切れ商品も続出する人気の裏側には、数々の新しい挑戦がありました。
SNS社会にこそ必要な人と人との交流
コミュニティカフェ・プロジェクトは、学内でカフェを開店、運営する体験を通じて、経営の仕組みや手法を学ぶサービス創造学部の正課科目。学生の自由な発想から企画されたカフェの開店に向けたスケジュールの策定、提供する商品の開発、仕入れ、広報活動、諸手続き、予算の管理などを全て学生が主体で行うことが特長です。この科目は2012年度から開講。履修する学生たちは、社会のニーズやマーケティングによって、求められるカフェの新しいサービスを創造し、「七夕」や「バレンタイン」などの季節感、「和」や「パリ」の雰囲気などのテーマでカフェを企画してきました。また、カフェを学内外の交流の場とすることも目的の1つとなっています。SNSがコミュニケーションの主流となっている現代社会。学生たちは、人と人との交流の機会、気軽に集える空間の提供が、今求められるサービスだと考えました。
屋内から屋外へ、人が集える場所づくり
2017年度の活動は4月から始まりました。2年生から4年生まで25名によるプロジェクトの代表は、3年生の河津雄太さん。1年生の時に見かけた学内カフェの様子に興味を持ち、昨年度からプロジェクトに参加しています。河津さんには、春学期の企画にあたり「コミュニケーションツールとしてのカフェでありたい」という強い思いがありました。これまで先輩たちが企画したカフェの立地や客導線、利用状況の振り返りから、たくさんの商品が売れ、プロジェクトがめざす「交流の場としてのカフェ」にするためにはどうすればよいのだろうか、それが今回の企画のスタート地点になりました。
挑戦の1つがカフェの「場所」です。本学の魅力である緑豊かな屋外で、自然を感じリフレッシュできるところにカフェを開こうと考えた河津さんたちは、7月上旬の開店の時期に合わせ、「期末テストの前で勉強に忙しい学生に落ち着ける空間を新しいサービスとして提供すること」を今回のコンセプトとすることに決めました。
学生のニーズを捉えたオリジナル商品の開発
企画書が完成した5月中旬からプロジェクトメンバーは、「ドリンク」「フード」「広報」「レイアウトデザイン」「運営企画」「会計・申請」の6班に分かれ、開店への準備を進めていきました。食欲をかきたてるメニューづくり、安らげる雰囲気の演出にも、新しいアイデアがたくさん取り入れられています。
地元の商店から仕入れた商品の販売のみならず、オリジナルフード、ドリンクの商品開発にも取り組みました。本学のある市川市はトマトのハウス栽培が盛んなこと、安くて腹持ちの良さを好むというニーズ調査の結果から、考案したのはピザトースト。パンの厚さや具材を検討し、公民館を借りて自ら試作品づくりにもチャレンジしたり、サービス創造学部を象徴する黄色のオリジナルドリンクの開発も手がけました。企画に合った商品の完成には味や見た目も大切ですが、原価・杯数計算をした上で仕入れを行ったり、黒字経営の実現を意識したさまざまな策を考えることの重要性も必然と理解できるようになりました。
一方で、屋外での食品の提供には衛生管理や調理の面で学生だけで行うことには限界もありました。そこで、地元でカフェを併設する農園の協力により、学生が考案したレシピに沿って調理されたピザトーストを仕入れる形でオリジナルフードの販売に漕ぎつけました。
めざした形のガーデンカフェを実現!
約2ヶ月間の準備を経てオープンした「Cafe Green Garden」。1号館の前庭には商品を販売するテント、パラソル付きのテーブルが設置され、お客様を迎える用意が整いました。初日の開店からお昼の時間が近づくにつれ、どんどん客足が増え、30個限定のピザトーストはなんと30分以内で完売! パイナップルとスライスレモンを炭酸水で割ったオリジナルドリンク「フルッタ」の売れ行きも好調でした。初日の様子は地元ケーブルテレビでも紹介され、子どもを連れた地域の方々も足を運んでくれました。緑に囲まれた空間で食事や会話を楽しんだり、くつろいだ時間を過ごす姿は、プロジェクトがめざした交流やリラックスの場となっていることを感じられました。反面、予想を上回るスピードで売れていく現場では、コップや店内に用意した商品の在庫が不足するトラブルも発生。販売を一時中断し補充に当たりましたが、状況の変化を共有し早めに対処していくことは、次回への大きな課題になりました。
期間限定の営業を終えた学生たちですが、秋学期のカフェの開店に向けてすでに動き始めています。次回のアイデアを探しに街のカフェを巡るなど、企画を決めるプレゼン大会の準備に余念がありません。「これからもコミュニケーションの場というコンセプトを大切にしていきたい」と話す河津さん。新たなサービスを生み出すプロセスを実体験したことは、将来の仕事に役立つビジネスの知識、マネジメントスキルの習得に繋がっています。
学生の声
プロジェクトでの私の役割は副代表と広報でした。例年よりも地域の方々がたくさん来店してくれたこと、中には3日続けて来てくれた親子もいました。私はゼミでマーケティングを学んでいますが、「売れるものを作る」という意味がよく分かった気がします。学生たちが商品に求めるものを取り入れたオリジナルフード、ドリンクがとても人気だったことをはじめ、例年とは異なる趣向、自分たちが考えたサービスに対するお客様の良い反応がとても嬉しかったです。
サービス創造学部 野口義彦(幸手桜高校出身)
もともとカフェが好きで、学内にカフェをオープンする活動から経営学の学びを深められることに魅力を感じて参加しました。私はドリンク部署のリーダーとして、「フルッタ」の開発と販売を行いましたが、予想を上回る売れ行きに、準備期間の大変さも忘れてしまうほど楽しむことができました。このプロジェクトを通じて、責任を持ち、計画的に仕事を進めること、話し合うことの大切さを学ぶことができたのも、共に活動したメンバーの協力があってこそ。企画をやり終えた達成感が自分の自信に繋がりました。
サービス創造学部 大野めぐみ(篠崎高校出身)
担当教員の声
私たちの生活の中には、こんなことができたらいいな、楽しいなと思えることがたくさんあります。それをどうすれば実現できるのかを考え、自分から動くことで、思考や行動範囲が広がっていきます。変化の激しい社会では、次はどんな波がやって来るのか、お客様は何を望んでいるのかを常に考えて仕事をしなければなりません。好奇心や探求心が旺盛であるほどうまくいく、面白くなるということを、このプロジェクトから学び、日々の生活や将来の仕事に生かせるようになってほしいと思ってきました。最初は「プロジェクト活動」の意味さえ分からなかった学生たちが、屋外のカフェ、市川市の名産品を使ったメニューなど、新しいことを考え創り出していくことの楽しさを知り、どんどん活動が盛り上がっていったことが嬉しかったです。学生時代の経験が企業の即戦力となるように、私も学生たちの指導、サポートをしっかり行っていきたいと思います。
サービス創造学部 准教授 滝澤淳浩
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同じ学部の学生たちでも、組織のマネジメント、マーケティングなど、ゼミナールで専門的に学んでいる分野が異なることが、このプロジェクトではとても役立ちます。私は代表として組織をどうマネジメントしていくかを一番に考えてしまい、思うようにいかないこともありましたが、自分にはない分野の知識や違う視点を持った仲間と意見を出し合うことで数々のアイデアが生まれました。コミュニティ、コミュニケーションにこだわった屋外での開催は成果があったと思います。
サービス創造学部 河津雄太(習志野高校出身)