教員コラム

政治・経済・IT・国際・環境などさまざまなジャンルの中から、社会の話題や関心の高いトピックについて教員たちがわかりやすく解説します。

環境

21世紀の現代、地球全体で環境問題が深刻化しています。日本に住む皆さんは家庭から出すゴミの分別レベルぐらいでしか環境問題を意識することがないかも知れません。皆さんは「オゾン層」って聞いたことがありますか? オゾン層は地上から約10~50キロメートルにある地球全体をおおうオゾン分子の層のことですが、この層が有害な物質から私たち生き物の命を守ってくれています。この層は赤道近くではぶ厚くなっていますが、両極(北極・南極)辺りでは、近年の調査だとかなり薄くなっていることが確認されています。これによって「酸性雨」といった大きな被害が出ています。純粋な水は中性ですが、酸性になると樹木や植物をねこそぎ枯らしてしまったり、小さな動物はそれを飲んで死んでしまったりすることもあります。特に北ヨーロッパなどではこうした被害が急進行しており、緊急の対応が求められています。

オゾン層の破壊はフロンガスという有害ガスを大量に発生させたからだと言われています。確かにフロンガスは化学的には安定した物質で便利でした。エアコンや冷蔵庫の冷媒、電子部品の洗浄、発泡スチロールの発泡材やスプレーなど幅広く使われてきました。つまり企業の活動の工業化によってオゾン層破壊が進行したといって良いと思います。

では企業は生産活動をやめるべきなのでしょうか? 企業は皆さんが便利な生活を望むから、車や家電製品などの製品を造っているはずです。地球のことを本当に考えれば、私たちは江戸時代のように質素な生活に戻るべきなのかも知れませんが、実際それはなかなか難しいでしょう。企業は「お金を稼ぐ」目的で活動をしていますから、皆さんが便利な生活を望めば、そうした製品やサービスを提供しようとします。企業は競争する企業よりも少しでも安く製品を造りたいし、てきぱき仕事をしてくれる従業員さんに働いてもらいたいし、製品を造る機械設備だってCO2が出にくいものに新調するとばく大なお金がかかりますから、あまりそういうことは気乗りがしないのが本音です。だけど、このままいくと社会や地球はだめになってしまう。どうしたらいいでしょうね。

私はそうした問題意識を持って研究しています。例えば最近企業は、ペットボトルは回収してそのまま土の中に埋めてしまうのではなく、繊維にして洋服に再利用したり、省エネ製品といって皆さんが使用するときにCO2が出にくい製品(エアコンなど)を開発・生産したりし始めています。ただこうした企業の進んだ活動も、皆さんがそうした製品を買ったり、そうした企業を支援したりすることがなければ、継続することは難しいです。もちろん企業が環境に配慮すれば、お金がかかります。環境に配慮した新製品を開発するのにも、CO2や有害な物質の出にくい設備に新調するのにも、実際お金が必要です。つまり、企業は環境に配慮した分のお金をある程度みなさんが負担してくれなければ、環境保全活動は続けることができないのです。

私は今学長プロジェクトの一環でもこうした共同研究を展開しています。瑞穂祭(千葉商科大学の学園祭)ではブースを出して、学生のみなさんの環境意識調査を行いました。その結果、売価の5割増しまでならそうした企業の製品を買っても良いと回答した人がなんと8割強もいました。企業とみなさんの良い循環を作って、良い社会にしていきたいものですね。

解説者紹介

安藤 崇