コロナ禍のもと大変な状況ですが、昨年の学長コラム1月号は、以下の書き出しで始まっていました。「今年はいよいよ、東京オリンピック・パラリンピックが開かれます。これを楽しみにしている人も多いと思いますが、オリンピックの後は、景気が後退すると言われていますので、喜んでばかりもいられません。
オリンピックが予定通りに行われるはずで、その後のことを心配していたのですが、2月から事態は大きく変わりました。新型コロナウイルスの感染拡大で、オリンピックどころではありませんでした。今年の夏に延期されたオリンピックの開催も、1月にNHKが行った世論調査の結果では、「開催すべき」はわずか16%。8割近くの人が開催は無理だとしています。どうなることでしょう。
コロナ禍と本学の対応
新型コロナウイルス感染症はCOVID-19とも言います。これはCoronavirus Diseaseの短縮形と、2019年の19を組合せたものです。2020年2月にWHO(世界保健機関)が命名しました。2019年12月に感染者が見つかったので19となっていますが、パンデミックになったのは2020年。日本では2月段階では、大騒ぎにはなっていませんでした。しかし、本学はリスク管理のため、他の大学に先駆けて構内入構禁止措置を取り、遠隔授業の準備を始めるなどの対応をしてきました。
その後の対応は皆さん、ご存知の通りです。学生の健康と安全を確保するため、また感染拡大を防止し医療崩壊を回避するため、遠隔授業と面接授業の双方の授業を行ってきました。面接授業の実施にあたっては感染防止を徹底。この秋学期には、ゼミナール科目等、全授業の3分の1ほどを面接授業で行いましたが、感染防止を徹底した結果、本学では学内での感染や濃厚接触などは1件も発生しませんでした。
具体的にはキャンパス内の教室等の抗菌処理をはじめ、教室には教室定員の半分以下、最大で5分の1ほどまで減らす密度管理、定期的な換気などを行い、キャンパス入構時のチェック、マスク着用も徹底しています。これら感染防止対策の徹底により安心して面接授業を受講できます。
むしろ、教室外の活動のリスクの方が高いのです。文部科学省からも「大学等については、授業そのものよりは、いわゆる飲み会や寮生活、課外活動等における感染事案が多く発生している」との見解が示されています。
大学での学び
私はたびたび言って来ましたが、大学での学びは学生がキャンパス内に登校してこそ十分な教育効果を得られます。それは大学での学びが、直接対面しての授業から得られるものが大きいからで、教職員と学生、学生相互など、他の人との直接対面でのコミュニケーションの場が重要です。オンラインでのコミュニケーションの質も次第に高くなっては来ましたが、現場での体験に変えることはできません。このことは、実学教育を旨とする本学においては、特に重要だと考えています。オンライン授業は補完的なものと位置づけるべきです。
学びには、自らの頭の中で考えを深めてゆくものと、他の人との議論によって思考を深め、発見を積み重ねて行くものがあります。いわゆる座学と野外学習、あるいは、講義、演習、実習・実験の違い。書斎等で一人でもできるものと、教室や野外で他の人とのやり取りや共同作業により成り立つものがあります。
そして、大切なのは、人と人とのリアルのつながりをつくること。教員と学生との交流、学生と学生との交流、職員との交流、図書館やハブなどでのアクティブな活動や学内での諸活動。こうして楽しく学ぶことで、人として成長して行くのです。
学生の活躍
コロナ禍のもと、2020年度の入学生諸君は1年前に期待していたものとは全く異なる大学生活だったと思います。なかなかキャンパスに入れず、新しい友達もできない。私たちは、学生諸君の安全確保のためとはいえ、このような事態になったことはまことに残念であり、申し訳なく思います。
しかし、学生諸君の勉学の意欲は劣えませんでした。オンライン授業でも積極的に参加して議論をする学生。あるいは、安全確保を徹底して少人数で自主的に勉学を続ける学生。この1年間、困難な状況のなかでも学びを止めなかった学生諸君を、私達は誇らしく思います。例えば、以下のような活躍があります。
昨年11月、瑞穂会がまたも快挙です。瑞穂会は、春と秋に行われてきた全国大学対抗簿記大会(主催:資格の大原 大原大学院大学)で、2019年11月には大会史上初の団体戦9連覇を達成しました。その後、コロナ禍のもと、大会が開かれませんでしたが他の大会に挑戦し、見事優勝しました。資格の学校TACの主催する簿記チャンピオン大会の団体戦で1位と3位です。個人戦でも2位に入りました。
また、大学主催ですが、学生が中心となる活動もあります。本学伝統のキッズビジネスタウンは地元の小学生や幼児を対象に、労働や消費などの体験を通して街の機能や仕組みを理解させます。2003年度以来毎年行い、今年2月末に第18回目を開催する予定でした。学生チームが教職員と共に準備をしてきましたが、コロナのため中止になってしまいました。でも、学生チームの皆さんはぎりぎりまで開催準備のため頑張ってくれました。こういう活動も良い学びの場です。
本学は、このように、オンラインだけではできない学びの場を色々と用意しています。コロナ後の世界は、これまでとは違ってくるでしょうが、リアルの場の重要性は変わりません。