学長コラム

本学の取り組みや教育活動、学生たちの活躍などの最新情報を中心に、時折、原科学長の研究テーマである参加と合意形成、環境アセスメントに関連した話題もお届けします。

自然エネルギー大学リーグ

6月7日、東京都心にある日比谷国際ビルの会議場で、「自然エネルギー大学リーグ」の設立総会が開かれました。このことは翌日の新聞各紙や、NHK総合テレビの「おはよう日本」などでも報道されたので、知っている人も多いでしょう。日本初の自然エネルギー100%大学を達成した本学から他の大学に声をかけて、この大学リーグが発足しました。学長からなる世話人会のメンバーは以下の9大学の学長です。

原科幸彦(千葉商科大学、代表世話人)、岩切正一郎(国際基督教大学)、岸田宏司(和洋女子大学)、髙祖敏明(聖心女子大学)、林佳世子(東京外国語大学)、金田一真澄(長野県立大学)、曄道佳明(上智大学)、越智光夫(広島大学)、田中雄二郎(東京医科歯科大学)

自然エネルギー100%大学

 「自然エネルギー大学リーグ」設立総会で決意表明。9大学のうち6大学の学長が会場に。長野県立大や広島大、東京医科歯科大はオンライン参加(背後のスクリーン)。左端は中井徳太郎 環境事務次官。

まず、電力使用量が理工系や医学系より少ない文系大学を中心にと始めましたが、結果的には理工系や医学系の大学の学長さんも賛同してくれました。このことから、この取り組みの重要さがわかると思います。

大学からのエネルギー改革

その狙いは、日本中の大学を社会のモデルとして、自然エネルギー100%大学にすることです。これには大きな社会的な意義があります。

大学は高等教育機関として教育・研究と共に社会貢献が求められています。例えば、人類生存を脅かす気候変動問題を解決するために脱炭素社会を目指すことが重要です。昨年10月以来、政府も2050年までに実質的に温室効果ガスの排出をゼロにするとしました。

化石燃料や原子力ではなく、自然エネルギーの積極的な利用は世界の動きです。世界の電力供給に占める自然エネルギーの割合は2019年には26.4%にまで増えました。日本も2019年には18.5%になりましたが、欧州諸国には遅れをとっています。日本は自然エネルギー資源に恵まれているので、脱炭素化に向けて、本来は再エネ100%のモデルを示すことが可能です。この問題に大学として取り組むことには大きく2つの意義があります。

まず、大学自らが行動することで、大学以外の企業や自治体、公的組織、NGOなど、他の様々な主体に影響を及ぼせることです。社会を構成する各主体が、持続可能な脱炭素社会に向けて再エネ100%を目指し活動してゆくことで、社会が変わってゆきます。それを大学が牽引することができます。

そして、高等教育機関の使命として、再エネ100%社会に変えていく人材の育成が求められます。そのためには机上の学問だけでなく、実学として、実際に個々の大学が自然エネルギー100%を実現し、模範を示すことが必要です。これが生きた教育になります。

無理なく、しかし、着実に

具体的には第一段階として、電力に関して自然エネルギー100%のRE100大学を目標とします。ここで、REとはRenewable Electricityです。まず、宣言をして無理のない形で一歩一歩進めます。そこで、大学間の連携と協力が大きな助けとなります。その先は、熱や移動手段も含め、大学の使う全エネルギーを自然エネルギーに転換することを目指します。

そこで、私は各大学の学長の皆さんに呼び掛けて、次の参加条件に該当する大学からなるリーグを結成することにしました。

  1. 大学(あるいはキャンパス)の使用電力量を目標に、2030年から2040年を目途とする自ら定める年限までに、自然エネルギー電力を生産もしくは調達することを大学として決定し、公表する。
  2. 大学としてその具体的な計画を策定し、実行する。

脱炭素化に向けて無理なく、しかし、着実に進めていきます。学生の皆さんも、この活動に参加してください。例えば、学長プロジェクト4「環境・エネルギー」への参加や、学生達がつくった、自然エネルギー達成学生機構(SONE: Student Organization for Natural Energy)、学長ゼミなどがあります。皆さんの自主的な活動を歓迎します。