学長コラム

本学の取り組みや教育活動、学生たちの活躍などの最新情報を中心に、時折、原科学長の研究テーマである参加と合意形成、環境アセスメントに関連した話題もお届けします。

「報道ステーション」で自然エネルギー100%大学を紹介

メガソーラー野田発電所

7月21日に経済産業省が新しいエネルギー基本計画の原案を公表しました。これは脱炭素化に向けて重要なニュースなので、その日の晩、テレビ朝日「報道ステーション」で、詳しく報じられ、日本初の自然エネルギー100%大学である本学のことも紹介されました。私が1号館の屋上で説明している姿を見た人もいるのではないでしょうか。

政府の計画は、2030年度の総発電量のうち再生可能エネルギーで36~38%を賄うというもので、それは現行の目標のほぼ倍となります。原案には「再生エネ最優先の原則で導入を促す」と明記し30年度の発電量を3,300億~3,500億kwh時に引き上げるとしています。再生エネをどう増やすかが重要な課題となります。

太陽光が無理だから石炭火力や原発を使う?

再生エネについては、洋上風力が期待されますが、30年度までに洋上風力を本格的に普及させるのは困難です。このため、再生エネの比率をあげようとすると、当面は太陽光発電に頼ることになります。そこで、その代表例として、本学の自然エネルギー100%に大きく貢献したメガソーラーも紹介されました。しかし、太陽光のさらなる増設には否定的な見方もあります。

番組の中で、本学の太陽光を紹介した後の場面で、国際大学の橘川武郎教授が、太陽光の最大の問題は日本にはスペースがないことだと言いました。そして、国土面積あたりの太陽光の導入量は既に主要国中、最大クラスで、パネルの置き場所は限られるとしました。でも、それだけで、もう無理だとはなりません。国によって風力を主体にするなど政策の差異はあるからです。日本は気象条件が太陽光発電に向いています。

しかし、太陽光発電ではパネルの設置を巡って近年、住民とのトラブルが相次いでいます。それは、山林を切り拓き斜面に無理に設置するものが多いためで す。だから、豪雨などでパネルが崩落するなどのトラブルが相次いでいます。

そこで、当面はかなりの部分を石炭火力での発電や原発の再稼働に依存せねばという議論も出るわけですが、果たして、そうでしょうか。

日本には太陽光発電が可能なスペースは山ほど

この議論は、視野が狭すぎます。組織のリーダーたる治道家は、そんな風に狭くは考えません。実は、山を切り拓かなくても、太陽光の安全な場所が日本にはいっぱいあります。森林を破壊したり、斜面を利用したりする必要はまったくありません。

本学のメガソーラーはその具体例で、野球グラウンド跡地で平坦な土地です。ここは採石場の跡地だったので農地には向かないし、不便なところなので住宅開発にも向かない、土地利用に困っていた場所を有効利用したのです。この発想で視野を広げて考えれば、日本には使われなくなった平地がいっぱいあります。平地だが、山ほどある。

例えば、使われなくなった農地。これを耕作放棄地と言いますが、今、国内には46万haほどもあります。本学のメガソーラーの敷地は4.65haですから、その10万倍ほどもある。つまり、あのメガソーラーが10万カ所も設置できる。本学の発電実績は年間、370万kwh時ほどなので、その10万倍では何と3,700億kwh時。政府の発電量目標値、30年度に3,300億~3,500億kwh時を悠々達成。つまり、土地利用計画次第で、太陽光発電だけで目標達成が可能。

そのような土地利用を行うためには農業者など地権者の合意が必要です。共に、気候変動対策として脱炭素化の問題を考えることで、共存共栄の新たな工夫が生まれます。これを実現するのが、治道家です。皆さんもこの問題について考えてみてください。色々なアイデアが生まれることでしょう。