学長コラム

本学の取り組みや教育活動、学生たちの活躍などの最新情報を中心に、時折、原科学長の研究テーマである参加と合意形成、環境アセスメントに関連した話題もお届けします。

明けましておめでとうございます。とは言え、コロナ禍は収まらず、厳しい年明けです。
2021年の秋、新型コロナウイルス感染が大分収まっていましたので、本学の活動制限レベルを11月1日からはレベル2に下げました。これに基づき、授業は対面授業中心となっています。ただ、冬になると再度増えて行くかもしれないとの危惧も述べました。ここに来て、残念ながら、その恐れは当たったようです。

日本の感染者は格段に少ない

1月4日、東京都で感染確認数が100人超、全国では昨年10月6日以来、3カ月ぶりに1,000人を超えました。そして、5日には全国で2,368人と急増。第6波の懸念が高まっています。
とは言え、日本の感染者数は各国に比べればずっと少ない。米国では同じ頃、100万人を超え、英国で20万人、フランスで27万人。人口の大小を加味すると、日本なら40万人ほどの数になります。検査数の差も大きいので実数に差は出ますが、日本は桁違いに少ない。
オミクロン株の感染拡大の様子も見ると、今後、楽観は許されませんが、感染状況自体は欧米と日本ではかなり違うようです。そうであるなら、感染爆発とならない段階で手を打つことも可能です。

日本はなぜ少ないか

日本で、感染者が桁違いに少ない理由は何でしょう。いくつかが考えられますが、それらの複合効果でしょう。
まず、昨年後半に、ワクチン接種が急速に広がったこと。日本は欧米に比べワクチン接種のスタートが遅かったのですが、その後、接種体制が出来上がると急速に接種率が上がりました。1月3日の時点では、日本のワクチン2回接種完了者は78.5%。主要7カ国(G7)で最高です。また、日本人は体重が欧米人よりも軽いのに摂取量は同じため、効果は大きいのではないかという指摘もあります。その代わり、副反応も欧米より強い。とは言え、深刻な副反応は滅多に出ません。
そして、欧米の人たちと日本人の行動様式の差があります。日本では風邪をひいた時などに従来からマスク着用の習慣があるため、今回のコロナ対策でのマスク着用にあまり抵抗がない。むしろ、マナーとして人々がマスクを着用している。そして、3密を避ける意識も高い。換気も積極的に行う。他の人に迷惑をかけたくないという気持ちが根底にあります。

強制でなく個人の判断で

このような協調的な姿勢は日本人の特質で、良い面ですが、悪い面もあります。良い面は、強い規制がなくても、そのことの意義を理解すれば、それがマナーとなり人々は自主的に行動します。だから、有事法制のような形で強制的に行う必要はありません。マナーを守らないことは恥と感じる。それは良い面で、日本人の美徳であり、人々の自主的な行動を支えます。
でもそのマナー自体が間違っている場合には、困ったことになります。日本は社会的同調圧が高いと、よく言われますが、他の人と違うことをやると非難される。しかし、社会が誤った方向に進もうとしている時、ただ同調するのはとても危険なことです。正しい方向なのか否か、適切な判断をして行動することが重要です。

科学的根拠をもとに

そのためには、正しい情報を得ることが不可欠です。特に、科学的根拠の有無が問題になります。
インターネットには色々な情報が出ています。中には偽の情報が出回り、それに引っ張られてしまうことがあります。昨年前半はワクチン接種で不妊になるというデマがSNS上に出回りました。これは、科学的根拠のないデマですが、それに惑わされた人もいます。その後、ワクチンの有効性や安全性に関する研究成果が積極的に紹介され、このデマは駆逐されました。
科学的根拠を見極める力をつける。これは、大学教育の重要な役割です。皆さん、新年にあたり、しっかりと学びの決意を固めてください。