学長コラム

本学の取り組みや教育活動、学生たちの活躍などの最新情報を中心に、時折、原科学長の研究テーマである参加と合意形成、環境アセスメントに関連した話題もお届けします。

民間の活動を支える公共

2月号では、欧米諸国に比べ、日本の公務員が極めて少ないことを書きました。保健所の職員までも減らしてきたことが、日本ではPCR検査の数が増えないことの要因の一つです。

日本の公務員は、ピーク時の3分の1、約30万人にまで減ってしまいました。国と地方を合わせた人口当たりの公務員数は欧米諸国の半分ほど。今では、日本は 「小さすぎる政府」になっています。

また、人事院が公表した国際比較データによれば、日本の1,000人あたり公的職員数は2018年時点で36.9人と極めて少ない。一方、フランスは90.1人、イギリスは67.8人。公的職員とは公務員以外も含むものですが、日本は社会を支える公的部門の人員がこれほど少なくて良いのでしょうか。

本学は1928年、商業教育のために設立され、1950年の大学昇格後は商学部を設置し、その後、商経学部となりましたが、教育の対象は企業など民間部門で働く人が中心でした。しかし、21世紀に入り、公的部門を対象とする政策情報学部が設置されました。公的部門の人材育成は、民間部門での活動を支えることになります。民間の活動の「真っ当さ」を支えるのが公共です。

真っ当な経営には情報公開

法治国家において法遵守(コンプライアンス)は基本で、人々がルールを守ってこそ社会はうまく機能します。透明性の低い社会では、コンプライアンスは保証できません。

環境や社会への影響に配慮する「真っ当な」経営や経済活動には、正直者が馬鹿をみないようルールを守らせることが不可欠。2月号でも書きましたが、食品の産地偽装や部品等の不正検査が後を絶ちません。法を守らぬ不正行為で経費を減らして利益を得るのは「真っ当な経営」ではありません。

企業活動の情報公開を推進し、法遵守をチェックするためにも、十分な数の公務員が必要です。違法行為が生じるたびに、公務員の人員不足のため十分なチェックができないことが指摘されています。

そして、数とともに質が重要。武士のように筋を通す、真っ当な公務員は不可欠です。森友事件で自死した赤木俊夫さんのことは皆さん知っているでしょう。事実を曲げず筋を通そうとしました。彼のような公務員がもっと増えれば、世の中は良い方向に向かいます。

統合報告書

ルールを守るには、取り締まるだけでなく、人々が自発的にルールを守るようにする。そのための効果的な方法は企業活動の情報公開の推進です。社会の目があれば、おかしな行為はできなくなります。

会計情報の公開は、その意味で大きな意味があります。時には公開された財務諸表の分析から違法行為が見つかることもあります。オリンパスや東芝などの不祥事は、公開された財務情報の分析から不正が明らかになりました。

通常の企業会計よりさらに進んだ情報公開もあります。例えば、1990年代半ばに現れたトリプルボトムライン。通常は損益計算書の最下行(ボトムライン)に経済的側面の情報だけを記載しますが、併せて社会的側面、環境的側面についても記載するものです。これは、持続可能な開発(SD)の概念が背景にあります。

この考え方をさらに拡大したものが、統合報告書と言われるもので、これは組織の今後の価値創造の方針と戦略を報告します。すなわち、財務情報に加え、企業統治や社会的責任、知的財産などの非財務情報も統合し報告します。自主的に公開することで、社会からの信頼度が高まります。

本学も今年度、統合報告書を発行しました。大学では東京大学など、この活動は始まったばかりですが、本学は率先して作成、公表しました。正直が一番。これが本学の伝統です。報告書は英文でも作成し、公表しています。

関連リンク