実務経験を研究へつなぎ、地域と企業の未来を考える

小坂拓也さん

2025年12月学位取得
小坂拓也さん

本学への進学を決めた理由を教えてください。

私は長年、静岡県庁で行政実務に携わる中で、地域社会や中小企業が抱える課題について、実務経験だけでなく、学術的な視点からも深く探究したいと考えるようになりました。特に、人口減少や人手不足が進む中で、地域経済や中小企業の存立基盤をどのように支えていくべきかという問題意識を強く抱いていました。
そのような中、本研究科は社会人が働きながら研究を続けられる環境が整っており、公共政策だけでなく、中小企業支援や地域経営など実社会に近いテーマを研究できる点に大きな魅力を感じ、進学を決意しました。また、多様な実務経験を持つ社会人院生と共に学べる環境も魅力でした。実務と研究を結びつけながら学べる点は、本研究科ならではの特色であると感じています。

本学での研究内容を教えてください。

大学院では、外国人材の活用と中小企業経営に関する研究に取り組みました。近年、中小企業では人手不足が深刻化しており、外国人材の受け入れが進んでいます。しかし、単なる労働力確保にとどまらず、外国人材が安心して働き、地域社会の中で活躍できる環境づくりが重要になっています。
私は、静岡県内の中小企業や支援機関への調査を通じて、外国人材の定着率が高い企業には、「生活面を含めた丁寧な支援」や「地域とのつながりを重視する姿勢」といった共通点があることに着目しました。こうした取り組みは、外国人材が安心して働き続けられる環境づくりにもつながっていると考えています。
研究では、企業へのインタビュー調査やアンケート分析を行い、「ウェルビーイング(福・働きがい)」や多文化共生の視点から、中小企業における外国人材活用のあり方について考察しました。こうした研究を通じて、現場の実態に根ざした政策や経営への提言につながる知見を得ることができました。

在学中に苦労したことは何ですか?

最も苦労したことは、仕事と研究の両立です。社会人として勤務を続けながら大学院に通っていたため、平日は仕事を終えた後に研究を進め、休日も論文執筆や調査に充てる生活が続きました。
特に博士論文の執筆では、先行研究の整理やデータ分析に想像以上の時間がかかり、研究が思うように進まない時期もありました。何度も論文を書き直し、指導教員の先生方からご指摘をいただきながら修正を重ねたことをよく覚えています。それでも最後まで研究を続けることができたのは、指導教員の先生方の丁寧なご指導や、同じように働きながら学ぶ院生の存在があったからです。多くの方々に支えていただきながら博士論文を完成させることができた経験は、自分にとって大きな財産になっています。

博士号を取得したことで、ご自身の仕事や生活に変化はありましたか?

博士号を取得したことで、課題をより論理的・客観的に捉える視点が身についたと感じています。行政実務においては経験や判断力が重視されますが、博士課程で研究を重ねたことで、データや先行研究を踏まえて分析する姿勢が強くなりました。現在は大学教員として教育・研究に携わっていますが、博士課程での経験は、学生指導や地域連携活動にも生かされています。特に、実務経験と研究成果を結びつけながら授業を行えるようになったことは、自分自身の大きな変化だと感じています。
また、博士号取得によって、自分の専門分野に対する責任感も強くなりました。研究成果を社会へ還元していく重要性を、以前以上に意識するようになったと感じています。

受験を検討している方たちへメッセージをお願いします。

社会人になってから大学院へ進学することには、不安や迷いを感じる方も多いと思います。私自身も、仕事との両立や研究への不安を抱えながら入学しました。しかし実際には、多様な経験を持つ社会人院生や先生方との出会いを通じて、多くの刺激を受けながら学ぶことができました。
私自身、県庁での長年の勤務を経て大学院に進学しましたが、それまでの実務経験こそが研究の出発点になり、現役の社会人だからこそ取り組める研究テーマがあると実感しました。実務の現場で感じる「なぜ」や「どうすべきか」という問題意識は、そのまま研究課題になります。仕事をしながら研究を続けることは決して簡単ではありません。しかし、自身の経験を研究として整理し、社会へ発信していくことには大きな意義があります。もし進学を迷っている方がいらっしゃるなら、ぜひ一歩踏み出して挑戦していただきたいと思います。