大学院 最新情報 2021年度

お知らせ

会計ファイナンス研究科修了生新林宏彦さんが、公益財団法人租税資料館「第30回租税資料館奨励賞」を受賞しましたのでお知らせします。

第30回租税資料館奨励賞

公益財団法人租税資料館「第30回租税資料館奨励賞」受賞
新林 宏彦さん(会計ファイナンス研究科修了生)
標題:「後発的事由に関する法人税法上の損益帰属時期の一考察—制限超過利息の返還債務確定の問題をはじめとした裁判例の分析を中心として—」

租税資料館では、税法学ならびに税法と関連の深い学術研究を助成するため、税法等に関する優れた著書及び論文に対して、毎年租税資料館賞を選定しています。「租税資料館賞」は、税法等に関する著書及び論文に対する表彰であり、このうち大学院生の論文を対象としたのが「租税資料館奨励賞」です。
※租税資料館賞の詳細は、租税資料館公式ウェブサイトよりご覧いただけます。
URL:https://www.sozeishiryokan.or.jp/award/index.html

受賞者コメント

この度は、名誉ある租税資料館奨励賞を頂き、大変嬉しく思います。
本論文では、「後発的に課税要件事実に変動が生じた場合に、法人税法上、それを現年度調整と遡及修正いずれの方法により調整するか」という論点について、包括的・体系的な検討を試みております。

そして、その中でも、破産等に至った消費者金融会社における制限超過利息返還債務確定の事案を通じて、「継続企業の前提が崩れた法人についても、法人税法22条4項(公正処理基準)を根拠に、現年度調整が強制され、納税額の減少という救済が十分に図られないことが、解釈論として妥当か」、「妥当である場合、立法措置も含め、今後どのようなあり方が考えられるか」を考察しました。
課税実務においても身近な問題と思いますので、要約部分だけでも、お目通し頂けますと幸甚に存じます。

執筆にあたってお世話になりました、指導教授である齋藤幸一先生をはじめとした、本研究科の先生方、スタッフの皆さま方に、この場をお借りして心よりお礼申し上げます。

指導教員コメント

新林さん、租税資料館賞の受賞、おめでとうございます。
熱意を持って取り組んだ研究の成果が、学外の専門機関からも評価されたということで、担当教員としても、非常に喜ばしい限りです。

役後発的事由による損益認識時期については、10年ほど前に、企業会計の方で、過年度遡及会計基準が制定されましたが、これを法人税法上、どう扱うのかという問題があります。

またこの場合、遡及修正するか、又は現年度調整かという問題は、会計的には、基本的に繰越利益が変わるだけですが、税務では税額が変動する可能性もあります。また租税法律主義との関係で、法的安定性、予測可能性を保てるのか、そのための一定の判断基準が必要ということになります。

その後、国際会計基準を踏まえた収益認識基準の改正に伴い、平成30年度の法人税法の改正で、法人税法22条の2が新設されましたが、上記の問題点の解決には至っていません。

新林さんは、制限超過利息の返還債務確定の問題等の裁判例の分析を中心として、これらの問題点を研究し、極めて有意義な提言を導いています。
その研究内容、提言は、今後のこの分野の研究者にも影響を与えるものと考えます。

新林さんの今後益々のご活躍を祈念しております。

最後に、在学生への一言ですが、本学大学院では、各ゼミでの判例研究、論文テーマの決定、研究計画書の策定、中間発表等、いくつかの段階を経て、論文完成へと導いています。

皆さんは、それぞれの環境、立場で、忙しい毎日かと思いますが、ご自分の興味を持った主題について、各ステップでの努力を積み重ねて、是非、ご自分で納得のいく論文に仕上げていただきたいと思います。そしてこの大学院でのよい思い出としてください。

(指導教員:齋藤 幸一客員教授)

過年度の租税資料館賞、租税資料館奨励賞受賞者

  • 令和元(2019)年 第28回
    標題:「仮想通貨・トークンに係る課税上の諸問題—所得課税の現状と今後の課税の在り方を中心に—」
    会計ファイナンス研究科修了生 柴田 冬樹氏(指導教員:齋藤 幸一客員教授)
  • 平成30(2018)年 第27回
    標題:「投資促進税制としての租税特別措置法の課題—投資誘因としての租税特別措置とパテントボックス税制の検証—」
    経済学研究科(中小企業診断士養成コース)修了生 新垣 厚氏(指導教員:田井 良夫教授)
  • 平成27(2015)年 第24回
    標題:「国際的な課税権の確保と税源浸食への対応—国際的な二重非課税に係る国際課税原則の再考—」
    会計ファイナンス研究科客員教授 居波 邦泰氏
  • 平成26(2014)年 第23回
    標題:「寄附金税制に関する一考察—「寄附金控除の年末調整制度化」を中心として—」
    会計ファイナンス研究科修了生 上村 大輔氏(指導教員:有馬 恒夫客員教授)
    標題:「消費税の課税に関する一考察—社会保険診療に対する非課税措置といわゆる「損税」について—」
    会計ファイナンス研究科修了生 金原 俊輔氏(指導教員:木本 聡子教授)
  • 平成24(2012)年 第21回
    標題:「法人課税信託における租税回避への対抗策—外国信託を利用した複層化スキームによる租税回避への対抗策—」
    会計ファイナンス研究科修了生 扶持本 泰裕氏(指導教員:本庄 資客員教授)
  • 平成23(2011)年 第20回
    標題:「相続税における居住ルール」
    会計ファイナンス研究科修了生 根岸 英人氏(指導教員:本庄 資客員教授)